確保訓練
自然フォール時の「制動確保」
1996年5月19日、古賀志山にて行われた会山行の確保訓練に参加した。参加者は
(L)渡辺輝男(指導)、田中茂雄、宮内幸男、粂川浩爾、柳沢英市、伊藤泰造、鈴
木辰郎、指崎知子、村山秀人、佐藤龍市、小田美穂、宮沢直樹、三好恭子、岩
切貴乃、今井洋樹、鈴木ユウ子、田村道和、畠山健一、須田忠明、角倉哲志の
20名。1.器具を用いた制動確保、2.垂直フォールの制動確保、3.ボディービレ
イによる制動確保の実技訓練を行ったほか、4.横取り救助、5.弾性率と衝撃吸
収の実験を行った。
一般事項
* ロープを結ぶということは、相手をとめられることが大原則である。従って
単にロープで結んであるからと言って安全性が増すというものではない
* ロープを出してもスピーディーな行動ができなければならない→習熟度が必
要
* 一般に、日本では欧米に比べてロープを出さなさすぎると言われている
* 制動器具としては「ATC(AirTraffic Controller)」、「シュテヒト環」、
「エイト環」、「マジック・プレート」等がある
* 「制動確保」はExtremeの確保、すなわち自然フォールでの確保として重要
* ロードセルで実測すればわかるが、ロープの弾性のみで落下者を止めるのは
不可能である
* ビレイヤーにとっては「落下距離」より「落下係数」が重要である
* 実際の山行で重要になるのは(1) ルートを読む、(2) 先行パーティーの有無
を確かめる→先行パーティーがいれば、落石を注意する必要がある。つまり
ラインをはずして待機する。(3) パートナーと合図の確認をする→クラブに
よって、また人によって異なるので注意(4) パートナーと共にアンカーポイ
ントの確認をする
(村山君と粂川さんの実演)
* 流動分散→落ちたらどの方向にひかれるかを考慮→流動分散の場合、どれか
1本が抜けてもブレーキングしながら残りのアンカーで止まる
* セルフビレイをとる
* セコンドが登る前には、ロープアップして左右に振り分けてひく
* セコンドは登ったら、メインロープからセルフビレイをとる
(ハーケンに関する強度の目安)
* 縦ハーケンを縦に打ち込んだ時、強度は150〜300Kg前後になる。横ハーケン
で1,000Kg、リングボルトで200〜1,000Kg。通常、残置ハーケン・ボルトの50%
は500Kg以下の荷重で抜けてしまうことに留意する
* ランナーを取る理由:ビレイヤーに対しては落下係数を小さくするためであ
ると同時に、落下者に対しては落下の際の衝突を防ぐ効用がある
* アンカーポイントからの出始めはランナーは1.5〜2m間隔が良い
* ロープが一定量伸びたら、小さく取らずロープの弾性を利用する(平均して4
〜5m)
* 確保する場合には、落下することを考慮してアンカーをとる
1.器具を用いた制動確保
「制動確保」の反対は「固定確保」→従って固定確保しやすい器具はロープ・
ロックしやすいことを理解しておく
「制動確保」とは器具に流れ込むロープの角度を変えること
2.垂直フォールの制動確保
準備:タイヤを包むために「ロープ・バスケット」を応用
3.ボディービレイによる制動確保
器具を用いず、ボディービレイにより「制動確保」をする
「固定確保」をすると簡単に体は飛ばされるが、「制動確保」をすると落下
の力にも耐えることができる。この実技により「固定確保」と「制動確保」
の違いを認識することができる
このボディーによる「制動確保」は制動手の角度を変えてコントローする
4.横取り救助
(レスキュー講習の復習につき省略)
5.弾性率と衝撃吸収の実験
弾性のある3mmφスリングでは10kgの荷重に耐えることができても、全く弾性
のないワイヤーでは切れてしまう→このことはテンションがかかったり、古
くなって弾性のなくなったロープは、衝撃荷重がかかった場合切れやすいこ
とがわかる
知ってました?
普通のOLにとっての不思議単語解明です。
ジッヘル:Sicherung<独語>「確保」という意味で使用しているこの言葉には元
来、次のような意味があります。(1) 保全、保安;保証。(2) 安全のための措
置[対策]。(3) (銃などの)安全装置;ヒューズ。
感想
制動確保が自然フォールに対して、なぜ必要であるかを理解。従って、(殆ど「
固定確保」に近い)フリー・クライミング時のビレイと「制動確保」とは異なる
ことを認識する必要があろう。
[Copyright (c) 1996 by Takano Iwakiri]