情島 聴音探照所(特設見張所)


情島 聴音探照所(特設見張所)2007.3.17


左:全体図、右:米軍の航空写真(R462-15、国土地理院)



左:南部の聴音照射所、右:米軍の航空写真(M2-6-107、国土地理院)



倉橋島の北東に浮かぶ情島に聴音探照所が造られていた。広の阿賀港から1日3(2?)便の連絡船が出ているが、ダイヤが島の人優先になっているので日帰りだと1時間しか滞在できない上に日祭日運休である。ただ、島内で会館を借りて泊まることが可能であること(10人まで4000円くらい、水道トイレ電気のみでガスは無し、事前に島の自治会長に連絡が必要)と、倉橋島から釣り船で渡してもらえるので、全く攻める手立てが無いわけではない。
米軍の航空写真では、島の最高所付近と南側の88mピーク付近とに施設が写っているが、最高所付近のものは亀ヶ首防空砲台から移設予定の12.7cm連装高角砲の砲座、南側のものが聴音探照所である。











左:円形窪地A、右:円形窪地A、向こう側が空いている



左:円形窪地Aの南側、右:円形窪地A



左:円形窪地Aの内部から、南西方向、右:円形窪地A内にあるコンクリート基礎



左:円形窪地B、右:円形窪地AとBの間にある連絡路?の窪地



左:円形窪地BとCの間にある窪地、右:同左



左:円形窪地C、右:円形窪地Cの東側



左:円形窪地Cの南東面、右:円形窪地Cの東面、石垣が崩落している



左:円形窪地Cの内部、右:同左の中心にあるコンクリート基礎



左:円形窪地Cの北側の出入口、右:基礎と土塁



左:畑から探照所方面を望む、右:畑から砲座のある山を望む



左:探照所横の畑へは矢印方向へすすむ、右:同左



左:写真の家の裏手付近に壕を掘って発電機を置く予定だったらしい、右:発電機用の物かどうかは怪しい水槽





集落の南東にある山の上に、聴音探照所がある。すぐ東に現役の畑があり、また畑からも藪がそれ程酷くないので簡単に行ける。
西端にある円形窪地Aは内径約4.5mで、石垣で造られている。中央には直径約1.2mで6ヶ所の穴が開いたコンクリート製基礎がある。北西面の土塁が低くなっており、少し広いものの出入口かもしれない。
北端には円形窪地Bがある。内径約2mであまりはっきりした窪地ではない。AとBの間には連絡路らしい細長い窪地があるが、内側を石垣で組んでおり、ただの自然地形では無さそうである。
東端には高さ2m程の石垣で組まれた円形窪地Cがある。内径は約3.5m、中央には直径約80cmの6ヶ所の穴が開いたコンクリート製基礎がある。北側には出入口が設けられている。
BとCの間には、L字型の窪地がある。ただ浅くて形状が不明瞭なので、自然地形の可能性も無いでもない。

形状などからして、Aが探照灯、Cが探照灯の管制器が置かれていたのではないかと思われる。AとCとどちらのコンクリート基礎もアンカーボルトが植えられる前の状態であり、工事は完了していなかった事が判る。



探照所への道を尋ねた島の自治会長さんによると、
(1)発電機は麓の、今は家のある裏手に壕を掘って設置する予定だったが間に合わず、海岸の近くに仮置きしていた
(2)工事中のまま終戦を迎えた。発電機以外の機器は無かったように思うが、探照灯の分厚いガラスはあったのを覚えている
(3)山頂の砲座(船で2番目に大きい大砲とおっしゃっていた。高角砲の事だと思う)は土盛りでこちらも未完成だった
そうである。また山頂の砲座へは行けない事もないが、藪になっていると思われるのでそれなりの装備をして時間をかけないとたどり着けないともおっしゃっていた。



また帰りの船で一緒になったお婆さん(戦時中は阿賀で女学生、姉が島に在住)の話で、
(4)3軒くらいの家に部屋を仕切って4、5人づつ兵隊が分宿していた
(5)兵隊は年寄りが多かった
(6)空襲の際に砲弾や爆弾の破片が多く落ちて、戦後すぐに家の屋根をやりかえたこと
も伺う。

また砲台や探照所とは関係ないが、島内のMさんの畑があった場所が強制収用されて分厚いコンクリートでスロープがつくられ、水陸両用戦車の訓練が行われていたという話も伺う。こちらは厳しく、近くに畑があっても機密保持の為に近寄れなかったそうだ。自分は知らなかったが、特四式内火艇で編成された特攻部隊Z隊のことかと思われる(Wikipediaの特四式内火艇の項を参照)。





日付 呉海軍警備隊戦時日誌及び引渡目録による記事
昭和17年3月 将来砲台建設要望
昭和19年11月 150cm探照灯1 新設 官房艦機密第4992号に依り工事中
機密呉鎮守府命令第443号
 秋月、吉松山、音戸、情島、新開、飛渡ノ瀬、三高、毘沙門、小仁方に探照灯台設置を令す(呉鎮)
(亀ヶ首)12.7cm連装高角砲2基 完備 呉鎮命令第425号に依り情島へ移送未着工
昭和19年12月 探照灯台 工事中
昭和20年1月 探照灯台 工事中
昭和20年2月 新配備 探照灯台
探照灯台 工事中
昭和20年8月31日 引渡:
96式150cm探照灯及び同管制器、付属品補用品共、電動直流発電機 1基
ディーゼル交流発電機陸上用60KVA220V三相60KVA配付 1基

用地:19550m2、建物:400m2(情島砲台)





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