塩生砲台





詫間の北西側にある塩生山の山頂とその北西側の丘に、防空機銃砲台と防空砲台の跡が残っている。塩生山山頂の機銃砲台跡は、山に遊歩道が整備されているためにアクセスしやすいが、丘の上の防空砲台は完全に藪の中に埋もれており探索は難しい。
2008年春に訪れた際には塩生山の機銃砲台のみしか見つけられなかったが、航空写真を基にした11月の2度目にしてようやく防空砲台の施設跡を発見できた。




塩生砲台





左:砲座A北側を上から、右:砲座A南西側を上から



左:砲座Aの東側の砲側弾薬庫、右:同左内部



左:北側の砲側弾薬庫、右:西側の砲側弾薬庫



左:西側の砲側弾薬庫の内部、右:コンクリート製壁面の西端



左:東側の砲側弾薬庫の裏側、右:コンクリート製壁面の東端



左:砲座Aの中央部、右:砲座A南西下の石?垣



左:砲座Bを北上から、右:砲座B平坦部



左:砲座B北東隅、右:砲座B東隅



左:砲座Bの北側の石?垣、右:砲座Bの南下の石?垣






左:砲座C南上から、右:砲座C南西壁面



左:砲座C中央部から南壁方向を、右:砲座C中心から北西側を



左:砲座C南隅、右:砲座C中央部付近



左:指揮所Dの円形窪地E、右:同左、南側に通路が延びる



左:指揮所Dの円形窪地F、右:同左、南側へと通路は続く



左:指揮所Dの中央部G、右:同左右側の内部



左:Gから東側へと開いた出入口、右:G付近を上側から



左:兵舎があったかもしれない畑、右:詫間航空隊跡を望む






左:米軍の航空写真(M746-27、国土地理院)


塩生山の西麓にある標高50m程の丘の上に防空砲台跡が残っている。
丘の地形を殆どそのまま使用し、山頂中央部に指揮所と、丘を少し下がった周辺部に4ヶ所(今回の探索では3ヶ所のみ確認)の砲座を配置している。砲座同士の連絡は周辺部に巡らした犬走りのような通路を利用していたのではないと推測される。

一番綺麗に残っているのは南東側の砲座Aで、斜面の土止めとして北半分のみにコンクリート壁を造り、3ヶ所の砲側弾薬庫を設けている。戦後畑に戻された際に大分手が加えられたものの、地形から推測するに南側は開放されていたものと思われる。南下の東西両側にコンクリート片で造られた石垣があるが、これは戦後のものだろう。内径約7mの円形で、砲座としての大きさも丁度良い。

南西側の砲座Bは地形のみ残っている。周囲にコンクリート片の石垣が幾つかあることを考慮すると、元々は砲座Aのように北の斜面側の壁面にコンクリート壁があったものが資材として剥がされてしまったのではないかと思われるものの、工事未完だったという可能性もある。また砲座Bは東西は約7mの広さを確保しているものの、南北は5mくらいしかない。元々こうだったのか、崩れて狭くなったのかは不明である。

北側の砲座Cは広さでは一番広いものの、コンクリート片が見当たらない。藪に埋もれており、地形の確認があまりできなかった。

山頂の少し北側に指揮所Dがある。内径2m程の円形窪地E、内径1.5m程の円形窪地F、そして方形の窪地G、更に南だが探索できなかったので形状不明のHが、幅約30cmの通路で繋がっている。深さは40cmから1m弱くらいの深さしかないが、埋もれている土砂を出せば1mから1.5mくらいの深さにはなるのかもしれない。また土砂の下に測距儀や高射器、高角望遠鏡等の基礎が残っている可能性もある。もし残っていれば相当に珍しいものである。


これまで何ヶ所かの防空砲台を探索したが、これほど綺麗な状態で指揮所が残っている砲台は珍しい。また殆ど地形に加工をしていない戦争末期の防空砲台の形状も珍しく、教育委員会等で調査をしてもらいたいくらいである。
また砲座BとCの間の位置に砲座Iがある筈なのだが、藪が酷くて探索していない。それから2008年11月に訪れた際には、春には無かった探索の痕跡があった(おかげで探索が比較的楽に出来た)。どなたかは知らないが、本当に感謝。



2008年の春に訪れた際、麓で農作業をされていた方々にお話を伺ったところ、
(1)山頂に4門の大砲があったこと
(2)終戦時に外人が来て爆薬で破壊してしまったこと
(3)破壊された大砲は残っていたもののスクラップ屋が持っていってしまったこと
(4)大砲があった穴はゴミで埋められ、畑になってしまったこと
(5)丘の南東の峠の辺りに兵舎があり、ここから兵隊が大砲に向かって走っている姿を良く見かけたこと
(6)兵舎から少し下った所にある池に兵隊が水を汲みに来ていたこと
(7)本来の山頂への道は山の南側からだったこと
を教えていただいた。





砲台名 引渡目録による記事
塩生砲台 12cm高角砲4、高射器1、
13mm機銃架台2、測距儀架台1、信管調定器4





塩生機銃砲台


左:塩生山の頂上を南側から、手前は円形窪地C、右:頂上の北側、木の麓に円形窪地A



左:中央部にあるL字型窪地B、右:同左を北側から



左:南側にある円形窪地C、右:BとCの間にある小窪地



左:北側にある円形窪地A、右:山頂から詫間航空隊跡地を望む





塩生山の山頂に、幾つかの窪地がある。南北に内径2m程の2ヵ所のA、Cの円形窪地があり、機銃の配備数が13mmの2門だった事を考えると、この2ヵ所の穴が機銃のものだったのではないかと思われる。
中央にはL字型の窪地Bがある。5m×3m程の大きさで、元々露天の窪地だったのか、地下壕が陥没してしまったものなのか、また機銃陣地の退避壕だったのか、詫間航空隊の障害灯の施設跡なのかは不明である。