1930年代のイタリア航空というと、もうたいていの日本人が「紅の豚」のイメージを思い浮かべる。宮崎駿さんのメッセージ力って偉大だな、とあらためて思いますね。その「紅の豚」に登場してそうでしてない飛行艇が、このCRDA CANT Z501です。
CANTというのは、トリエステ海軍工廠の略で、その後アドリア地区海軍造船所(CRDA)と名前が変わりましたが、CANTという名前が有名になり、呼びやすかったので現在まで定着しています。もともとは海軍の造船所で、そこで飛行艇も製作していたという訳です。造船所が作ったわりにはとても優雅で美しいデザインだと思うのですが、名設計者として高名なフィリッポ・ザパータの作品です。その後の作品Z506,Z1007など彼の作品には必ず彼の名前の頭文字「Z」が付いているのですぐ判ります。このZ501型は1934年に原型が初飛行したのですが、完成したモンファルコーネ工場からそのまま燃料満載で飛び立って、当時イタリアの植民地だった東アフリカのマッサワまで到達。水上機の長距離飛行記録を更新するという華々しいデヴューを飾りました。その後は本来の目的である海上救難、偵察任務のために地中海全域で活躍することになります。愛称のガッビアーノはイタリア語でかもめのこと。
キットはイタレリが発売したものが唯一ですが、つぼを押さえた好感の持てるもの。キット指定の軍用型に仕上げるには特に手間もかかりませんが、今回記録飛行を行った民間登録記号の初期型への改造を行ったため、コックピット周りを中心に、結構な大仕事になってしまいました。
マーキングは全て、自作のデカール。機首部の文字はもっとくっきりと目立つはずだったのですが、
下地の銀色の影響でくすんでしまいました。失敗です。
結構アングルによってはイメージが変わります。正面からだと頭でっかちで、マッコウクジラ的なフォルムです。
プロペラがコックピットの真上でブンブン回るんですね。さぞ搭乗員はうるさかっただろうと思います。
何を考えたのか、この並列コックピット。個人主義の強いイタリア人のことだから、長距離フライトで長いこと一緒にいるのならせめて操縦席を半個室状態にしてくれ、というプライバシー的な理由?
まさかなあ?私としては一緒に同じコックピットにいると、イタリア人のことだからお互いにずっとしゃべりまくって操縦に集中できなくて危ないから、ってのが真相のような気が。さすがにその後の軍用型では、ごく普通のコックピットに直っています。
後姿の優雅なシルエットが、この時代のイタリア飛行艇のチャームポイント。
女性的で流れるようなラインの魅力とイタリアントリコロールできりっとアクセントになっているところが、絶妙のバランスですね。