ハンディGPSをテストしましたのでその結果を報告します。
使用したのはガーミンGPS38Jです。

ハンディGPS(GPS38J)の使用報告

  GPSとは複数の人工衛星からの電波をキャッチし、それぞれの人工衛星
からの情報を比較することで現在の位置を求めるシステムで、そのためには
最低でも3個、できれば4個以上の衛星からの信号を受けることが必要です。

現在では乾電池でも動き、重さも電池を含んで300g以下のハンディタイプ
GPSが以前に比べて値段も安く(30〜40K円程度)店頭に出回っています。

このハンディGPSが、山行において自分の位置確認に極めて有効なことを
確認しました。

(測定場所はNEC横浜、自宅周辺、丹沢、北八ヶ岳、秋田駒ヶ岳周辺です。)

  ハンディGPSを利用するに当たって気のついた点は以下の通りです。

・使えない場合がある!

   周波数1.5GHz周辺を使用しているため、地形や樹木の影響により
 上空の面積が限られるような場合は捕捉できる衛星が少なくなるために
 測位できない場合が多くなります。

 例として北八ヶ岳の白駒池周辺の道では鬱蒼とした樹林のため、丹沢の標高の
 低いところでは地形、樹木の両方の影響のために使うことができませんでした。


・電池の持続時間はまだ十分といえるレベルではありません。

   カタログ値はアルカリ電池の場合で連続20Hですが(メーカー、機種に
 よってはもっと短い)、連続12Hぐらいでした(気温約0度の丹沢)。

 1300mAhニッケル水素充電池では連続9時間(気温−5度の北八ヶ岳)。
 気温がもっと下がればさらに悪くなることが予想されます。

 電池を節約するために途中でスイッチを切っておくという方法は、
 衛星信号を捉える時間が15分以上に長くなるため、お勧めできません。

 休憩時間をGPSのためだけに使うことはできないからです。
 ただし、スイッチを切って1時間以内であれば早く測位できます。

 長期間の山行では十分な予備電池を持つか、リチウム電池にするべきでしょう。


・測位誤差の程度について

   現在、GPS衛星は、アメリカ政府によって運用されていますが、
 軍事上の理由から民間の利用についてはわざと誤差が大きくなるように
 設定されています(当面解除されそうにありません)。

 いろいろな方法でキャンセルすれば誤差を数cm以下にできますが、
 通常の受信機(システム)では、100m程度の水平誤差が生じても
 やむを得ないことになります。

 ただし、実際に使ってみると水平誤差はだいたい30〜40m、高度の誤差は
 150m前後に収まりますので実用に支障ありません。

 高度については気圧高度計の方が精度が高かったのですが、水平位置が出れば
 地図で高度は出せるので問題ありません。


・私の実際の使用方法

   まず、あらかじめ何箇所か2万5千分の1地形図などから目印となる地点の
 緯度経度を読み取り、ハンディGPSのメモリーに登録しておきます。

 この状態で使うと、緯度経度のほかに最寄りの登録地点までの方位と距離が
 表示されるので、あとは通常やっているとおり地図とシルバコンパスで
 自分の位置を読み取ることができます。

 最初は緯度経度だけを使ってみたのですが、場所を特定することは困難でした。
 屋外では風が吹くし、雨や雪が降るしで緯度経度の読み取りが大変です。

 OHPを重ねて読み取りを楽にしようともしてみましたが、緯度が変われば
 マス目の大きさが変わるので汎用性がなく面倒で、前述の方法に落ち着きました。

 なお、日本の主な山の山頂の標高と緯度経度は、インターネットで国土地理院の
 ホームページにのっているのである程度楽ができます。


・ナビゲーション機能について

   北八ヶ岳と秋田駒ヶ岳周辺で試験的に使用してみましたが、なかなか便利です。
 機能としてはあらかじめ通る予定の場所を入力してルート設定しておけば 
 自動的に次に行くべきところへの方位と距離を表示してくれるというものです。

 秋田駒ヶ岳周辺では視界5m以下の時折自分の手が見えなくなるような
 猛吹雪の中で無事に小屋を見つけることができました。

 ちなみに最初GPSに頼らず、自分でやってみようとしたところ
 30分かかっても見つけることができませんでした。
 (GPSでは8分以下で歩く時間のみです)

 冬山で平らな地形の場合、ホワイトアウトに見舞われるとこれまでは赤布や
 ロープとコンパスを併用した計器歩行しか手段がありませんでしたが、
 GPSを使えば難なく脱出できます。

 ただし、前述の弱点もあることと、機械ということで故障の可能性が
 あるのでなるべくこのような場面には踏み込まないようにするべきです。

                                                        以上

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 大舘雄一

GPS受信機の画像

撮影場所:NEC横浜の丸池のところ

緯度経度がN35度30分47.5秒/E139度34分8.7秒
となっていますが、
実際はN35度30分47.0秒/E139度34分10.5秒
です(CD−ROMのアトラスRD首都圏版を使用して読み取り)。
計算させるとだいたい50mずれています。
高度は2mとなっていますが、5万分の1で見るとおよそ7mというところ
ですから珍しく精度が良いデータです。
前に測ったときは平気で−47mとか60mなどという数字を出していました。

(別の画面で読むと)今回は3D測位しており、水平誤差は68mと
表示されていました。
表示は「現在測位に使っている衛星の情報からするとこの程度の誤差が
生じうる」という意味ですので、まあ良く合っているといえるでしょう。

塔が岳までの方位と距離は259度/37.2Kmと表示されています。


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