From: takayasu
Date: Tue, 16 Jul 1996 08:12:27 +0900
Subject: [climbing 3525] insubon

高安@東京雪稜会です

韓国の仁寿峰(インスボン)に行って来ました。

期間:96年7月4日〜7日
メンバー:(L)渡辺、小宮、柿沼、高安(全員が東京雪稜会)

7月4日(雨)
9:40  成田発KE705にてソウルへ。
12:30 ソウル着。なんか天気は雨。
      ターミナルを出たとこにあるタクシー乗り場で黒いデラックスタクシーに乗る。
      看板はみなハングルだが、町並みとかは日本に似ている。
   車は右側通行の左ハンドル。日本車は輸入規制があるそうだが、提携している
   らしく外形は日本車と同じのが多い。高速道路はタダで、広くて早い。でも分岐
   とか、一般道は混雑していることが多く、その点は東京と同じかな。おまけに
   道路工事も多い。
   ウィドンから急な坂を登って(4人+荷物で苦しい)。
14:30 登山口のトソンサ着。ハイキング道の入口という感じ。
      立派なトイレがあり(でもくみ取り)、中で着替える。
14:50 入場料 W1000 を払って出発。小雨の中を歩き出す 。
      道なりに登る。いくつか小屋みたいなところの前を通ったり、岩に刻まれた階段
      を通る。峠のようなところから仁寿峰が見えるが雨のなか。
15:40 白雲山荘着。
      売店があり、その前にはテーブルが置いてあってオレンジシートの屋根が張って
   ある。小屋の人らしいので、予約した日本人と伝えると、小屋に案内された。
   小屋は正面は石作りで他がログで作ってあります。外回りはほぼ完成で中がまだ
      制作途中という感じです。半分手作りみたいで完成までにはまだまだかかるよう
      です。
   中は、新しくてきれいで、二階が泊まる場所になっている。泊まり客は我々だけ
   みたい。おまけにビールのウェルカムドリンクが出てきた。
      もう本格的な雨になっていて偵察もできず。小屋のなかでウダウダしてました。
      晩御飯はさっきのオレンジシートの下で食べました。
   やはり、キムチ系を中心に10品ぐらいのおかずがありました。ご飯は日本と同
   じ感じでおいしいです。キムチなどはやっぱり辛いですが、辛さは抑えてあるよ
   うです。

7月5日(快晴)
      起きたら快晴であった。良かった。
??:?? 起床して朝ご飯。内容は夕べとほとんど同じ。
      岩雪163をみてアプローチを行く。トイレの裏ではなくて前の坂を登っていく
   が、上に登り過ぎてしまった。帰りのルートみたい。戻って、テントが張ってあ
   る広場の奥を行き、大岩隣のガリーを下る。昨日の雨で濡れていてとっても悪い
   が、ところどころステップが刻んであるので助かる。
   女情の白ペンキが見え、少し下って、それらしき取り付きにつく。
   現地クライマーが大スラブで練習している。男女ペアの先生と女の子一人のスク
   ールの様子。女性の先生のほうがちょっと感じが似ていたので、大岩スクールと
   名付ける。生徒がリードして、その横を男性の先生がスラブを軽登山靴でフリー
   ソロで登り降りして指導していて、女性の先生が、スポーツサンダルでセカンド
   で登っていた。
10:05 パーティは小宮-渡辺と柿沼-高安に分ける。小宮-渡辺で先行リード。ランナーな
      どは残置してもらって、その後を柿沼-高安もリードで登攀開始。(当初は別れる
   予定だったが、結局最後までこのパターン:う〜ん軟弱な我々)
      大スラブはクラック経由で鉄杭の支点へ。クラックの上のスラブが怖い。プロテ
   クションは当然ながら、クラックのフレンズだけで、10mぐらいさきの鉄杭ま
   でない。ここで、下からプロテクション無しで登って来た現地クライマーと一緒
   になる。2P目も同じようなスラブ。まだテラスへ届かなかったので、3ピッチ
   かかってテラスへ。
11:00 テラス着。ここからが仁寿Bのルート。

仁寿B
1P:濡れている流水溝からクラック。ビレイ点への抜け口が悪い。レイバックしかな
      いようだが、ホールドが甘い。ラストの私はけっこうギアを持っているので、
      重くて、けっこうたいへん。
2P:始めはワイドクラックで登りにくいが、すぐに快適なハンドクラック。
3P:広いクラックから足型にえぐれているダイクを左へトラバス。
4P:木の間を歩く。真っ直ぐ上へ歩いて、ちょっと右へ行くとそれらしきフレークが
   見える。
5P:フレークから浅いクラック。濡れてて怖い。

12:45 終了
      踏み跡を行き、2つほど岩場をのっこして、タヌキの腹(岩雪163)と呼ばれ
   るちょっと怖い大岩のスラブを登って、山頂へ。
      白雲台側を歩いて下ると幾つかの懸垂支点あり。50mダブルで2回でコルへ下降。
      コルから少し登って、踏み跡を下ると山荘へ。
      小屋でビールと温かいソーメンを食べる。非常にうまい。
      ビールも飲んじゃったし、ロングルートは無理なので、適当に遊ぶことにして岩
   場へむかう。白ペンキの女情とその20mくらい左のルートで遊ぶことにする。しか
   し、けっこう難しい。ルート図では、だいたい5.10ノーマルぐらいなんだけど、歯が
   立たない。
      小屋に戻って、晩飯。

7月6日(曇り)
      今日は、2本登る予定で、小屋の朝御飯は食べずに、夕べ買っておいたカップラ
   ーメンを食べる。
7:15  小屋発
7:47  シュイナードAをスタート

シュイナードA(キバエD)
1P:フェースとクラックを登って、テラスへ。
2P:コーナークラックでけっこうワイド。ビレイ点は左右に2ヶ所。
3P:同じくワイドなコーナークラック。
4P:ビレイ点のすぐ上がハングになっていて、ここを越すのがけっこうむずかしい。
   ハング部にボルトあり。怖いのでそれにアブミを掛けて越える。ちょっと考えれ
   ばそんなに難しくはないと思うが、そんなことを考えている余裕はない。
   その後は長いハンドクラック。フレアー気味とはいえ手も足もけっこう決まるの
   で面白い。
5P:右へ回り込んでフェースからクラックへ。
6P:スラブを左へトラバスして医大ルートの方へ行く。けっこうやらしい。

11:35 終了
      医大ルートを下降してオアシステラスへ。50mダブルで2回で下降。

12:40 友情Bを開始。

友情B
1P:クラックから右へトラバスしてテラス。
2P:濡れた壁で怖い。小宮リードで行き、私はリードできず。ロープを上げてもらって
   トップロープで登る。濡れた壁を上がり左へ大きく1歩。その上のクラックも怖く
   てロープをつかんでゴボウした。
3P:長いチムニー。セカンドはとくに疲れる。荷物をぶるさげるがどうしようか迷った
   けど、腹に抱えることにした。足元が見えないのでけっこうたいへんだが、ぶらさ
   げるよりは楽かなと思った。
4P:ダブルクラックをステミングで登る。濡れてて怖い。あとは土の踏み跡を登って、
   昨日の仁寿B終了点付近に出て終わり。

15:27 山頂着。
      昨日と同じように下降して山荘へ。下降中に雨が降ってきたが、すぐやんだ。

7月7日(曇りのち晴れ)
6:08  小屋発。
   今日はクライミングはなしで、白雲台に登ることにする。混雑するので、朝早い
   うちに登ってしまおうということで、朝ご飯前に登る。が、すでに大渋滞。
   花崗岩に刻まれた道を登る。少し曇っていて、風も強い。
6:25  白雲台着。

8:20  小屋発
   登山口入口に売店と出店がある。あのポンテギ(さなぎの佃煮風)も売ってい
   た。臭いはまさに魚のエサ。
   バス停近くになるとみやげ物屋がたくさんならぶ。ここらでバンダナを購入。
9:40  バス停
      左側にバスターミナルみたいなところがあり、おっちゃんに南大門市場近くに停
   まるバスを教えてもらい、乗り込む。   

   50分ぐらいバスに乗って、南大門市場前で降り、登山用品店へ。
   韓国製フレンズとアイスピトン、アダプターを買う。
      南大門市場をブラブラしてから、バス(601番)で空港へ。

18:40 ソウル発KE706で成田へ
      0:00前には家へ到着した。

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クライミング情報
・アプローチ
  小屋の右手の階段を上がって右に行くとトイレがあり、その前を登るとテントの張っ
 てある広場に出ます。その右奥の踏み跡を辿ると大岩にでて、そこのガリーというか
 涸れた滑滝のようなところを下る。ここは、濡れると非常に悪い。下りきったところ
 が岩場になる。小屋からだいたい10分ぐらい。
  正面に白ペンキで女情と書いてある。ここいらあたりは、ペツルのベタ打ちルートが
  たくさんある。ほとんどが、マルチピッチの1ピッチ目らしい。
  岩場沿いに下ると大スラブが見えます。下り切る手前が、(岩雪163記載の)大ス
 ラブの取り付きだと思います。現地クライマーは、もっと下から取りついてました。
  シュイナードA,Bへは、もっと下って回り込んだ先になります。
・ピン
  たしかに、スラブのルートはピンが少ないようです。でも、難しいルートはそれなり
 にあります。ほとんどが、ペツルタイプのボルトが打ってあります。少しだけリング
 とかRCCみたいなボルトもありました。(日本から買って行ったのかな?)
  各ピッチのビレイ点はボルト2本か、鉄杭が打ってありました。
 何故かハーケンはみあたりませんでした。
・下降
  仁寿峰山頂から白雲台方向の左下に下降支点の鉄杭が並んでます。支点までノーザイ
 ルになるので、ちょっと怖いです。50mダブルなら2回で下降できます。
 シングルでも下降は可能なようでした。
・アブミ
 自信のない人は持っていったほうがいいかも。私は1台もっていって助かりました。
・ルート
  仁寿峰はおおきな岩峰で、周囲にルートがいっぱいあります。回りもミズガキ/小川
 山状態なのでそこいらじゅうが岩場です。でも資料などがあまりないので、どこがな
  んだか良くわかりません。結局岩雪に載ってたルートを選ぶのが無難となりました。
・くつ
 ロングルートなんで、足が痛くならないものなら何でもいいと思います。今回のメン
 バーは、サミット/フィーレ/アナサジベロクロ/アナサジモカシン/バンバ でし
  た。

白雲山荘
・1棟しかありませんが、日本の小屋と同じというか、東北の避難小屋のような感じで
 す。家族みんなでやっている小屋みたいです。
・建設中で一般公開してないようなので、土曜の夜遅く数人が来た以外は我々だけでし
 た。外装は完成しているようでしたが、内装をあんちゃんが手作りしているようで、
 いつになったら完成するのやら状態です。雨が降っても雨漏りしてませんでした。
・晩御飯はご飯とみそ汁に焼肉/卵焼き/ウリのてんぷら/キムチ/キムチ系の漬物がたく
 さんでました。これは晩も朝も同じものがでました。朝だから少しあっさりというも
 のはありませんでした。
 ご飯は日本と同じような感じの炊き方です。豆が入っていることが多かったかな。
 で、やっぱり辛いです。トイレが………。
・お酒はビールと真露焼酎の他にマッコリとかいうドブロクがありました。現地の人は
 よくマッコリを飲んでましたが、口にあいませんでした。
・その他の小屋の食べ物は、温かいソーメン/おでん/とうふ/うどん/カップラーメ
 ン ぐらいかな。温かいソーメンはおいしかったです。ラーメンはちょっと辛め。
  とうふは日本の木綿とうふと同じ味でした。
・お菓子やみやげもの、ガスボンベなども売ってます。

入山/下山
・金浦空港からは、タクシーが便利だと思います。
・帰りは、タクシーを捕まえるのが大変かもしれないし、ボラれる可能性もあるので
 バスが良いようです。
・バスはウィドンから出てますが、バス停前に切符売り場みたいなボックスにおっちゃ
 んが座っているので、その人に行き先を言って、乗るバスを示してもらうしかなさそ
 うです。

その他
・小屋に多少はお菓子とか置いてありますが、1日中岩場にいるのであれば、行動食は
 日本から持っていった方がいいと思います。昼は小屋で、となるとビールを飲んじゃ
 うし。
・なにかと便利なので、コンロとコッヘルはあった方がいいと思います。お湯を沸かし
  てコーヒーを飲んだりカップラーメンとかを食べました。
  ボンベは飛行機に積めませんが、小屋で売ってます。EPIのヘッドでOKでした。
  カセットコンロのボンベも売ってます。
・現地での費用は4人で行って、1人あたり12000円ぐらいでした。
 航空券とおみやげなどの個人的な買物を除き、その他の交通費+宿泊費+飲食費など
 を全て含めての費用です。(意外に安かった)
 (レートは、W×0.14=円 ぐらいでした:1000ウォン=140円)
・水は小屋の横の井戸からとります。岩場の横を水が流れてますが、飲めるかどうかは
 わかりません。
・小屋なので、トレペは必須です。とくに食べ物が辛いので、何度もしたくなりやすい
  みたいです。(残り物を持っていったら足りなくなった。)
・気候は、ほとんど日本の東京あたりと同じみたいです。晴れると暑く、曇りや雨だと
 ちょっと肌寒いです。長袖はあったほうがいいと思います。
・韓国で、英語はほとんど通じません。場合によっては日本語のほうが通じるかも?
 今回は、リーダが少し韓国語を話せるので助かりましたが、全く判らないともしも
 の場合には困ると思います。
・噂に聞いていたとおり、あちこちで叫ぶ人や歌を歌っている人がいました。
 ひさびさに「ヤッホー」を聞いたし、自分もつられて叫んでしまった。
・韓国の人の気合というか、パワーというか、無謀さというか、とにかくスゴイの一言
 です。やさしいルートだとプロテクションをとらなかったり、フリーソロしたりで、
 もう、言葉がありません。

・帰りに空港税W9000を取られます。
・イミグレ通過後にも両替はできます。

感想
・非常におもしろかったです。
・精神的に弱いなと思いました。たぶんムーブとか難しくないし、フリークライミング
 状態だったし。でも、あんまり余裕がなかった。
 来る前に本チャンに行って、ロングルートとか高い壁の中にいるとかして度胸をつけ
 といたほうが良かったな。

参考文献
・岩と雪136号,163号
・クライミングジャーナル19号(持ってないので内容は不明)
・星稜登高会の会報  No.13(メンバーの誰かが持ってた)
・韓国の岩場(日本語:高田馬場のカモシカで売ってる小冊子)
・韓国の岩場のルート図(韓国語:リーダがカモシカで売っているのを見つけて購入。
 仁寿峰だけで80本ぐらいのルートを記載。)

****  東京雪稜会:高安昭男(Takayasu Akio)  ******
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[Copyright (c) 1996 by Akio Takayasu]