Date: Wed, 30 Oct 1996 19:09:43 +0900
From: "Yasuo Y. SUZUKI"
Subject: [climbing 4121] hiking on glacier

鈴木です.  

まずはモンブランについての報告です.  最後にモンブランで得たガイ
ド料についての情報や出発前に集めた文献等を書いておきます.  出発
前にはみなさまにはいろいろお世話になりました.  ありがとうござい
ました.  

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Mont Blancでの雪上ハイキング(19-21 Oct '96)

この季節にはほとんどのTelepherique, telesiege, tramwayは止まって
いて(9月下旬に順次止まっていくようです), 動いているのは,
Aiguille de Midiまでの長いTelepherique(ロープウェイ)と,
Montenvers行きのChemin de fer(登山電車)だけでした[10].

会議は金曜の午後1時に終ったので, それから車でシャモニーに出て, 絶好の
好天の中, telepheriqueでAiguille de Midiに上がる.  すべての山が手にと
るように見える.  Mont Blancの山頂も美しく輝いていた.  ロープウェイは
ここどまり.  Italia側にいくのはこの季節には動いていないようだ.  

土曜日は朝から天候が悪く小雨まじりの曇天なので, まずはショッピン
グ.  Snell Sportでお買いもの.  イタリアレストランで昼食のピザを
食べていると陽がさしてきたので, Telepheriqueの乗り場まで急いで出
かける.

日本での計画ではAiguille de Midiの展望を楽しんだ後, plan de aiguilleか
らMontenversまでのハイキング[3,4]のはずだったのですが, 昨日はAiguille
de Midiまで行っていたTeleperiqueも今日は天候が良くないので, Plan de
Aiguilleまでしか動いていません.  おまけに先週からの雪がいっぱい積もっ
ています.  2時のロープウェイで上がる.  雪のたっぷりつもったPlan de
Aiguilleに雪の降る中おりたつ.  駅で職員のおじいさんにアドバイスを聞く
と, 「雪が降っているからむずかしいよ」と言われる.  いろいろ迷った挙げ
句, ピッケルをだしたり, アイゼンを付けたり, しているうちに, またちょっ
と陽がさしてくる.  食堂の山男風のオジサンに相談すると「あんたたちみた
いな装備をしているんなら, Montenversへの道なら大丈夫」ということなので, 
雪がちらつく中, Montenversに向かって出発.  

2200mぐらいの高さを横に移動するだけなので, 視界が確保できれば楽チンの
ハイキングのはずだ.  雪さえ強く降らなければroute findingも簡単そうだ.
逆にどんどんお天気がよくなり, 岩山・雪山・下界の景色を湛能する.  雪の
量は, たまにアイゼンが岩に当たる程度で, 足もそれほどもぐらずちょうど良
い.  アイゼンなしでも歩いてみたがちょっとすべる.  ピッケルは必要なかっ
た.  買ったばかりのものは使いたくてしょうがないですからね.  家内の簡易
アイゼン+ストックというのが, あとの下降をふくめてベストの装備でした.
Montenversの最終電車の正確な時間を忘れてしまったので, 途中からChamonix
に向かっておりる.  1500mぐらいまでおりると雪がなくなり, 今度は紅葉の中
の気持ち良いハイキング.  Parking de Aiguilleという標識に従って行くと, 
ちょうどロープウェイの駐車場に降りられる.

宿泊は[5]の記事にあった, Auberge du bois prinに泊まりました.  レ
ビュッファの別荘のそばで, 雰囲気も似ているそうだ.  季節はずれな
ので1週間前の予約で, Mont Blancの眺められる部屋が取れました.  全
部で11部屋しかないホテルです.  山側にあるので, こういうところに
泊まるには, 車が必要です.  総じてこの季節はバスの便が少なく, ま
た駐車には問題がないので, レンタカーを借りておくとなにかと便利で
した(石原さんアドバイスどうもありがとうございました).

日曜日は朝から良いお天気だったので, 残った移動手段Chemin de Fer
でMontenversに上がる.  どこの乗り場にも駐車場がついているので便
利です.  季節はずれだからかパーキングは無料でした. 予定では
Grands MontetsからGlaciers d'Argentiereを歩いてrefuge
d'Argentiereに行ってLognanに下るはず[3,6]だったのですが, ロープ
ウェイが動いていないので, Mer de Glaceに変更[10].  今日はまず最
初にOffice du tourisme[9]に行って, 時刻表をもらっておいた.  帰り
の最終は16:40頃だった.  8時の始発には間に合わず, 9時の電車にのる.
Montenver駅に降りると, Mer de Glaceが目の前にひろがる.  昨日の道
(sentier)の終点が山から降りてくるのが分かる.  今日はGlandes
Jorassesに向かって氷河歩き.  駅から標識にしたがって道を歩いてい
くと, 垂壁に鉄梯子がかかっていて氷河におりられる.  氷河上におお
くの踏み後があり, 先行する一団も見えるので心強い.  アイゼン・ピッ
ケルを出し, ハーネスをはいてアンザイレン.  途中, 重装備で下って
くるガイドにすれ違い様に呼び止められる.  わたしがロープをグリグ
リにつないでいるのを目ざとくみつけ, 注意される.  氷の上のゆるい
斜面ではグリグリでは止められないとさとされた.  フリークライミン
グのためには良い道具だが, 氷河の上ではやめなさいと言われる.  ま
たアイススクリューも持ってきた方が良いとも指導された.  そんなも
んかなあと思うが, あとで身に染みる.  山渓の「氷雪テクニック」が
出たら買って勉強しようと思います.

しばらく行くと踏み後が二手に分かれるので, 足跡の多い方をとる.  子ども
たちがアイスクライミングをして遊んでいるところに到着.  ここで踏み跡は
行きどまり.  指導者が子どもたちをひきつれてアイスクライミグツアーをやっ
ているらしい.  これが立派な踏み後の原因でした.  その後何組か子どもたち
が入れ替わるのを目撃しました. 方向を変えてふたたびrefuge d'envers de
aiguilleをめざす.  このあたりからクレバスが大きくなり, 飛んでこえたり, 
細いエッジ上を歩いたりしなければならなくなる.  私が落ちたら家内が止め
られるかどうか心配だ.  やっぱりアイスボルトが必要なようです.  とにかく
なんとかクレバス群をクリアーすると緩やかな登りの雪上歩行となる.  

正面にグランドジョラスがそびえている.  氷河の上に大きな岩が落ちていて
ここから右手の方に氷河から離れていくとrefuge d'Envers des Aiguilleに向
かう道があるようだ.  ここでバゲットにジャンボンをはさんだサンドウィッ
チの昼食にする.  クレバス越えに時間が取られたので, refugeに行くのはあ
きらめ, 氷河が二手に分かれているところまで行って, 両側の景色をながめて, 
駅にもどることにする.  帰りにはうしろから続々といろいろなrefugeから降
りてきた人たちが続く.  みんなクレバス越えに苦労している.  ガイドのお兄
さんとお姉さんはまた新たな子どもたちの一団をアイスクライミングの遊び場
に連れていっている.  駅のそばの氷河ではなにも装備をつけない人たちが散
策をしていました.

駅には余裕をもって到着し(3時).  山小屋からのアルピニストが続々と氷河か
ら上がってくる(といっても10人くらいか)  結晶のギャラリーを眺めてから, 
帰りの電車に乗る.  宿で一緒の人に出合って, 話しを聞くと今日はロープウェ
イはAiguille de Midiまで行っていたが, なかなか雲がはれず結局Mont Blanc
山頂は見えなかったのこと.

三日目は朝から雨降りなので, シャモニーはもうあきらめ, Grenobleに移動し
てフリークライミングをめざす.  Freeについての報告は次回.  

最後にモンブランのために集めた情報について記しておきます.  みなさま
いろいろ情報ありがとうございました.  

モンブラン頂上への今年のガイド料は登山客二人にひとりのガイドをつけて
3400FFだったそうです.  また登山客二人あたりにひとりガイドを5日間つけて,
3日間ガイドとともに準備期間をとって, 最後の2日に山小屋での夜を含めてモ
ンブラン山頂にアタックするというformule "Stage Mont-Blanc"が一人当たり
4600FFだそうです.  そのほかEcole d'Escalade や Ecole de Glace もありま
す.

References 

1.  Gaston Rebuffat, "The Mont Blanc Massif ---the 100 finest routes" 
2nd ed.  The Moutaineer (1996).  出発前にモンブラン山群とその登山の概
要を掴むには最高の本でした.  英語版をAdventurous Traveler (http://shop.
gorp.com/atbook/)にて$39.95+shipping$11.95にて購入.  みなさま情報どうもあ
りがとうございました.  注文から到着まで3週間を要したため出発後に到着
したけど, 今楽しんでいます. 

2.  Cartes IGN 3630OT TOP25 (1:25000 map) "Chamonix Massif du Mont Blanc".
Snell Sportsで買いました.  

3.  小川清美 「スイスアルプス・ハイキング案内」山と渓谷社 (1991).
3900円 モンブランのコースが6つぐらい載っている.  ケーブルカー・ロープ
ウェー等が動いていればこれに紹介されているコース(次の[4]と重複している)
を歩くのは素晴らしいことでしょう.

4.  アルプス・ハイキングブック 山と渓谷 1996年6月号付録 モンブランのコー
スは2つ.  [3]と重複している.

5.  近藤 等, 山と渓谷 1996年9月号 p.168.  アルプスのホテルについて. 
 
6.  飯田 年穂, 山と渓谷 1996年9月号 p.172.  Aiguille d'Argentiereへの
コースについて書かれている.

7.  http://www.terragalleria.com/mountain/info/chamonix/
出発前の主な情報源はこれでした.  

8.  http://kfn.ksp.or.jp/%7Eyuuko/climbing/climbing/mont.html
レビュファーのモンブラン山群:特選100コースの新グレード・リスト
(作者:藤田 信幸氏)

9.  Office du tourisme  ここでハイキング地図(25FF)を買いました.  そのほか
Montenvers登山鉄道の時刻表ももらいました.  

10. Office de Haute Montagne [9]の向かいでガイド組合やメテオのある建物
の中にあります.  ここで家内が到着する前にハイキングコースや氷河の状態
などを相談しました.  今回歩いたコースは事前にここで相談した結果です.  
とにかくリフト・ロープウェイが動いていないので, 他に効率の良いコースは
ありませんでした.  英語も通じます.  

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では次回はGrenobleでのFree Climbingについて報告します.  

		鈴木 康夫

写真は 鈴木さんのモンブランのページ をご覧下さい(ちょっと重いかもしれません)。
[Copyright (c) 1996 by Yasuo Suzuki]