日本軍の高射砲の効率






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Effectiveness of Japanese AA Fire
U.S.Naval Technical Mission To Japan






高射砲の効率

導入:
究極的な意味での高射砲の効率は撃墜数で表わすことができる。次に重要度によって整理することによって撃墜した火力の分析を行い、結果としてそれが効率となるのである。
理解しようとする人々にとって正しい像を伝えられるような分析結果を提供する事はとても難しいし、分析する側が自分自身を誤らないようにする事も同じくらい難しい。

利用可能な記録の全てとアメリカに存在する最も良い分析用の科学的機器を使ったとしても、高射砲の分析作業は大変である。日本の高射砲の分析と効率を考慮した時、全ての資料が廃棄されてしまった場合などは更に困難になる。

得られた情報は、海軍と陸軍の2つのソースから成っている。情報は乏しいが、それ以上の詳細は得られなかった。陸軍から届いた素材は付録(A)(Enclosure(A))に含まれており、本来の形式とほぼ同じものである。



A:日本海軍の対空射撃の効果

1.幾つかの海戦において、何機の航空機が艦艇によって撃墜されたかという有用な情報は存在しないが(後に述べる瑞鶴艦隊を除く)、地上の海軍陣地における有効性に関する数字が幾つかある。
12.7cm高角砲では、95式システム(高射装置)と2式コントロール(日本海軍の対空火器管制の資料を参考)を使用し、8000m以下の射程、3000m以下の高度において、1機撃墜するのに150発必要というのが、一般に受け入れられている数字である。
25mm機銃においては、2000m以下の射程、1000m以下の高度で、1機撃墜するのに1500発という数字が引用されている。
尋問の中で、これらの射程外での射撃はまったくの非効率で、弾薬の無駄以外の何物にもならなかった事が述べられている。また別のコメントでは、射撃指揮装置と計算機を使用しない射撃も全く意味が無かったとある。これらは特に12.7cm高角砲と25mm機銃においては正しかったことが判明している。少なくとも日本人は彼らの「コースと速度」を見越した照準が役に立っていたと考えている。


2.ブーゲンビル島の海戦の前後から日本海軍で弾薬が極端に不足するようになり、結果として以下のような事実があったことは間違いが無い。
A:1機を撃墜するのに必要な発射弾数の減少
B:撃墜数の減少(これは広い意味での仮定だが、発砲が不経済だと信じられている時でさえ少数の正確な射撃が為されていた、と考えるのが妥当だろう)

弾薬の欠乏により、1000m以下の高度で急降下爆撃に対しての1機撃墜するのに必要な弾数は10発になる。ただ、この驚くべき数値が出てきた原因には、アメリカの航空機が同じ攻撃コースを維持しつづけて対空射撃を容易にしたということも考慮される。
また別の驚くべき数値として、グアム作戦の際に500機を撃墜したというものがある。これは、25mm機銃で1機撃墜するのに7発を発射したということになる。この結果を得る為には、800m以内に接近するまで引き付ける必要がある。


3.米軍航空機の戦術での別の一例が引用されるが、これはラバウルで日本艦隊が左舷へ旋回中に水平爆撃を受けた時のものである。日本人の証言によると、艦艇は一列で航行しており、敵機は爆撃コースを取る前に艦艇と平行に進んでいた。このコースで1000mの距離で射撃を開始し、多くの敵機を撃ち落としたとある。


4.艦船の対空射撃において唯一注目すべき例として、南海海戦が挙げられる。瑞鶴が20機を撃墜した。瑞鶴は、2基の94式指揮装置(高射機)に管制された12.7cm連装高角砲を3基と、60から70丁の25mm機銃を搭載している。この例では、12.7cm高角砲で1機当り150発、また25mm機銃では1000〜2000mの射程で1機当り1000発と主張している。(これらの数値は既に引用した数値を実証するものと思われる)


5.対空火器の効率を分析する為に更に詳細な数値を得る試みとして、日本側の評価が良くわかる、彼らによって注目されている幾つかの事を引用してみる。
A:8000m以上の射程では、10cm、12cm、12.7cmいずれの防空高角砲台も撃墜することが出来ず、最も結果が良かったのが射程が4000m以下である。
B:4000mから7000mの中距離では、98式10cm高角砲が最も満足が行ったと考えられている。
C:目標が回避行動("jinking")をとった場合、全く撃墜できなかった。



B.日本の対空砲火の効率の、分析手法

…計算式略…


12.7cm高角砲での計算結果、

 l x m x n = 0.0029

つまり、1000発撃って3発命中。









付録(A):
日本陸軍の高射砲の効率に関する情報(1946年2月2日)

(日本陸軍が作成したもの)



(a)日本軍の高射砲の効率

最大射高有効射高炸裂半径
15cmAA200001600030
12cmAA150001200015
8cm1000080007
7cm(old)90007000
7cm(new)100008000



有効射程

高さ15cm12cm8cm7cm
1500011800
12000139008900
8000148001130071004400
6000143001140083006600
4000133001070084006900
200011000910072005700
1003700300024001800



(b)B-29の高射砲による被撃墜率、1944年6月〜1945年5月まで
(第一総軍 の1945年6月の調査より)

地域述べ爆撃機数撃墜損傷被撃墜・損傷率
東京横浜301717640319
名古屋13822619215
大阪神戸9525011918
北九州4209217
南九州8320126
合計585428173617



(c)長、中、短のいずれの射程圏内で撃墜されたか、撃墜機数、撃墜された際の飛行状態(接近、急降下、引き上げ、離脱、等)といった記録が欠落しているので分析できないが、日本陸軍によって撃墜された状態は、中距離(3000m〜5000m)で接近中が最も多いようである。


(d)違う口径の高射砲による1機撃墜当りの必要弾数の記録もしくは見積もり

各種口径別の数値は無いものの、次の表は日本本土での一機当りの撃墜・撃破に必要な弾数を変換したものである。 第一総軍下の高射砲陣地における、1945年4月から8月までの撃墜結果の統計は以下の通りである。

大口径小口径
撃墜に必要な平均的な弾数8740
1機当りへの平均的な発射弾数11
被撃墜・撃破機の平均的割合13%






(e)高射砲の有効性の分析手法

項目7cmAA8cmAA12cmAA15cmAA
1:発射速度(秒)
(4発を発射するのに必要な時間)
661218
2:発射速度比
(15cmを1とする)
331.51
3:炸裂半径(m)571530
4:炸裂空間(m3)125343337527000
5:炸裂空間の比率
(7cmを1とする)
12.727215
6:5に2を掛けたものの比率
(7cmを1とする)
12.713.571.6
7:砲弾の重量(kg)5.2607.43019.34341.000
8:重量あたりの炸裂空間11.43.77.8
9:8に2で掛けたものの比率
(7cmを1とする)
11.41.852.6


これは、砲弾1発当りと発射速度によって計算された効率を表にしたものである。(a)で挙げられた炸裂半径も影響している。






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