秋月 防空高角砲台





秋月 防空高角砲台(2006.4.14、2007.3.18再訪)





米軍の航空写真(左:M2-6-29、中:M2-6-30、国土地理院)



江田島の秋月弾薬庫の近く、飛迫山の周辺に秋月防空高角砲台がある。ただ林道やNHKの電波塔の建設の為に破壊されている部分も多い。
防空機銃砲台も併設されているのだが、どこが機銃砲台かは不明である。南西の204mピーク付近の遺構は、兵学校の築いた鷲部高角砲台かと思われるが、藪に阻まれて寄せる事すらできなかった。




砲座周辺




左:平坦地Hを林道から、右:平坦地H、左手は旧道



左:最北端のレンガ製水槽A、右:水槽Aの西側の連絡通路B



左:平坦部C、右:同左、窪地が至る所にある



左:平坦部Cのレンガ片、右:同左のコンクリート片



左:平坦部EのL字形の溝D、右:平坦地Eのコンクリート製施設



左:平坦地Eのコンクリート製六角形の内張り、右:連絡通路の窪み



左:円形窪地F、右:電波塔Gを正面から



左:電波塔の東側を北から、この付近が砲座か、右:同左を南から



左:NTTの電波塔G、右:入口西側の設備



左:電波塔入口からE方向を望む、右:入口東側



左:入口東の斜面にあるコンクリート残骸、右:同左(フラッシュで撮影)



左:電波塔Gの北西にある円形窪地I、右:同左



左:方形窪地J、右:方形窪地K



左:方形窪地K、東側に石垣、右:円形窪地L



左:コンクリート水槽M、右:窪地J〜Lがある辺りを道路側から



左:道路の西下にある溝群N、右:溝群Nの内の一つ




NTTの電波塔付近が砲座である。
電波塔のある平地から北東方向に幾つかの平坦地がある。最北端の平坦地Hは現在は何も無いが、そのすぐ南上の平坦地に水槽Aがあるので、兵舎があったのではないかと思われる。また水槽Aの西側には平坦地Hへの連絡路らしい縦堀Bがある。
水槽Aの南上には平坦地Cがある。兵舎が建っていたのか、コンクリートやレンガの残骸が転がり、幾つかの水槽跡が残っている。
兵舎の南西上の平坦地Eには、幾つかの施設跡らしき遺構とそれを結ぶ連絡路らしき溝が残っている。中でも内側が六角形に整形された窪地が面白い。Eの西側にはL字型の窪地がある。またDのすぐ南西には内径約1mの円形窪地Fがある。

電波塔の北西には、内径約6m、深さが約2mの円形窪地Iがある。用途は不明である。
航空写真を見ると電波塔の東側付近が砲座になっているのだが、埋め立てられてしまったのか現在は何も無い。ただ電波塔への入口の東側の斜面にコンクリートの残骸が残っている。緩くカーブしていたので砲座の残骸かと思ったが、周りの土を全部どけてみないと何ともいえない。薄っすら緑色と茶色がついているのは、もしかしたら対空迷彩かもしれない。

電波塔の入口の南側の、道路の東側に窪地J〜Lがある。航空写真を見るとこの付近には大小2つの円が写っているのだが、その付属施設ではないかと思われる。肝心の大小2つの円は道路を造る際に削り取られてしまったようだ。また窪地Lの南下にはコンクリート製水槽Mがある。航空写真には兵舎らしい長方形も写っており、現在は道路建設で埋め立てられてしまっているが、この兵舎の関連施設かもしれない。窪地J〜Lの反対側になる道路の西下の斜面には、幾つかの溝が掘られている。防空壕が陥没したものなのか、連絡路の残骸なのかは判らない。周辺を探索してみたもののはっきりとした平坦地は見当たらなかった。





探照灯?施設付近




左:平坦地Aの北側、右:平坦地Aの南側



左:平坦地Aに転がるレンガ壁の残骸、右:レンガ基礎の残骸



左:窪地Bへの南側からの入口、右:窪地B



左:窪地Bから円形窪地Cへの通路、右:円形窪地Cを南側から



左:円形窪地Cを北側から、右:円形窪地C内部の南東側にある溝



左:円形窪地Cの西側の角部、右:円形窪地Cの西側の出入口



左:方形窪地D、右:方形窪地Dの南西側の石組、黒いのはペンキ?



左:方形窪地D付近、右:平坦地E



左:コンクリート基礎F、右:平坦地G



左:北側に下りる軍道、石垣で補強されている、右:探照灯ピークと聴音機ピークの間、この片にも何かあった筈




電波塔の南側の180mピークにも施設跡がある。
南側の平坦地Aにはレンガ製の壁や基礎の残骸が転がっており、恐らく兵舎が建っていたものと思われる。
山頂の平坦部の中央部には、内径約7m(メジャーで測ったのだが記録し忘れてしまったので、大体の記憶)の円形窪地Cがある。Cの北西には直径約140cmのコンクリート基礎Fが転がっている。恐らくCの内部にあったものを、アンカーボルトを取る為にここまで引き上げて作業したのかもしれない。円形窪地と基礎の形状から探照灯のものかと思われる。Cの内部には何かを掘ったような溝がある。Cの南側にはコの字型の窪地Bがある。
Cの西側には方形窪地Dがあり、Cとはくの字に曲がった連絡路で繋がっている。Dの南西側の連絡路の石垣に黒色がついているが、対空迷彩の塗料の跡だろうか。西端には一段下がって平坦地Eがある。西下に軍道が下っているが先がどうなっているかは確認していない。
北側の平坦地Gは広いものの何も無い。北側には九十九折に軍道が下っているが、所々を石垣で補強している。

航空写真を見ると、この施設群とその南の聴音機?施設群との間の道路付近にも何らかの施設があったようだが、道路工事で消滅したのか何も発見できなかった。





聴音機?施設周辺




左:円形窪地Aの内部東側、右:円形窪地Aの内部南側



左:円形窪地Aの外周部東側の石垣、右:外周部西側



左:北西側に開いた出入口、右:出入口南側の石垣



左:北西側から、右:出入口付近を道路から



左:遺構Bの南側の列石、右:北側の列石




飛迫山山頂とその北側の170mピーク付近にも施設跡がある。
道路の東側の170mピーク内には、内径約12m(平坦部、縁までだと内径が約15mくらいある)の大きな円形窪地Aがある。基礎は見つからなかったが、大きさと形状からして聴音機の物かと思われる。東側の外周部は石垣で補強されている。北西方向に出入口が設けられており、その南側には石垣がある。Aの北側にも平坦地があるが、潅木や羊歯が多くて地面形状は良くわからなかった。
現在石材置き場になっている平坦地の南東側に飛迫山の頂上があるが、はっきりとした遺構は残っていない。人工的に並べられた石は確認できたものの、建物の基礎というには残骸が無さ過ぎる。航空写真を見るとここにも何らかの施設があるのだが、建物なのかは不明である。

また同じく航空写真には、この飛迫山の南側に伸びる尾根上にも何らかの施設らしきものが写っているが、確認はしていない。





鷲部防空砲台も探索しようとしたのだが、南側の尾根は岩と潅木で全く進めなかった。北東側の尾根も細竹と潅木で覆われていて、こちらは無理をすれば進めない事はなさそうだったが、気力が萎えてしまい諦める。




秋月防空高角砲台

日付 呉海軍警備隊戦時日誌及び引渡目録による記事
昭和17年1月27日 官房機密第1152号
昭和17年2月 砲台調査中
昭和17年3月 将来砲台建設要望  
昭和17年8月 89式12.7cm連装高角砲3基 工事未着工
95式高射装置1、94式高角測距儀2 未配備
96式150cm1型陸用探照灯及管制器2型1 未配備
仮称ヱ式空中聴音装置1、12cm高角双眼望遠鏡4 未配備
官房機密1152(17.1.27)
昭和17年9月 工事施工内報
昭和17年11月 防空砲台工事中  
昭和17年12月 竣工予定S18.3.31
昭和18年1月 防空砲台(第2砲台群)工事中
昭和18年2月 防空砲台工事中  
昭和18年3月 防空砲台工事中  
昭和18年4月 防空砲台工事中  
昭和18年5月 土木工事6月完了予定、兵器取付6月下旬
昭和18年6月 8月下旬完成予定
昭和18年7月 土木建築工事中、砲座据付完了
昭和18年8月 施本機密工第1560号(18.8.14)、新設工事要領変更の件通牒接受  
昭和18年9月 防空砲台工事中  
昭和18年10月 防空砲台工事中  
昭和18年11月 防空砲台工事中  
昭和19年3月 官房設機密第641号により下士官兵戦時要員教育応急施設として兵舎構築中  
昭和19年6月 12.7cm連装高角砲2基官房機密第12255号により据付完了、5.7試射済、工事続行中
官房設機密第641号により下士官兵戦時要員教育応急施設として兵舎構築中(練習生収容しあれり)
普通科砲術練習生第96期対空水上高角砲班162名6-9月
昭和19年7月 12.7cm連装高角砲2基、官房機密第12255号に依り工事中、全量射撃可
官房設機密第641号に依り下士官兵戦時要員教育応急施設 完成

機密呉鎮守府命令第235号、昭和19年7月1日(呉鎮)
呉海軍工廠長は左に依り防空砲台照射聴測装置整理移設を実施すべし
大須山砲台→秋月砲台
96式150cm探照灯1型陸上用1、同管制器2型1  
昭和19年8月 12.7cm連装高角砲2基 官房機密第1225号に依り工事中 全量射撃可
昭和19年9月 12.7cm連装高角砲2基 既設  
昭和19年10月 12.7cm連装高角砲2基 完備  
昭和19年11月 12.7cm連装高角砲2基 完備
機密呉鎮守府命令第443号 秋月、吉松山、音戸、情島、新開、飛渡ノ瀬、三高、毘沙門、小仁方に探照灯台設置を令す(呉鎮)  
昭和19年12月 12.7cm連装高角砲2基 一部付属装置の外完備
150cm探照灯1、空中聴測装置1 完備
昭和20年1月 12.7cm連装高角砲2基 完備
150cm探照灯1、空中聴測装置無し 完備
昭和20年2月 12.7cm連装高角砲2基 完備
150cm探照灯1、空中聴測装置無し 完備  
昭和20年8月31日 引渡:
12.7cm連装高角砲2基
2式陸用高射装置 1組
94式4.5m高角測距儀付属品補用品共 1組
97式2m高角測距儀 鏡管のみ 1組
96式150cm探照灯及び同管制器、付属品補用品共、電動直流発電機 1基
12cm高角双眼望遠鏡 2個
建築物 兵舎4、其ノ他付属施設7 

用地:28199m2、建物:332m2



秋月防空機銃砲台

日付 呉海軍警備隊戦時日誌及び引渡目録による記事
昭和16年11月 機銃防空砲台、第一砲台群
昭和16年12月 機銃防空砲台
昭和17年1月 機銃防空砲台
昭和17年9月 機銃防空砲台
昭和19年3月 兵舎構築中
昭和19年6月 25mm連装機銃1基 応急新設工事中
兵舎構築中(教育応急施設)
昭和19年7月 25mm連1基 応急機銃として工事中
教育応急施設 完成
昭和19年8月 25mm連1基 応急工事中
昭和19年9月 25mm連1基 工事中(応急分散)
昭和19年10月 25mm連1基 工事中(応急分散)
昭和19年11月 (機銃砲台リストから消える)



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