毘沙門 聴音探照所


毘沙門 聴音探照所





左:米軍の航空写真(M2-6-46、国土地理院)、右:主要部(堡塁の観測所周辺)



右:中央部の拡大図



明治期の砲台(第一堡塁、第二堡塁)の敷地内に、毘沙門聴音探照所がある。砲台の観測所の直ぐ北のピーク上に、観測所を取り巻く塹壕の石垣を転用して施設跡が築かれている。






左:円形窪地Fの内部、右:Fにある基礎



左:FとGを繋ぐトンネル、右:Fの東側



左:Fの東側の通路、右:I付近



左:FとGを繋ぐ通路(F側から)、右:方形窪地G



左:FとGを繋ぐ通路(G側から)、右:Fを西側から



左:Fの南側の石垣、右:レンガ構造物J



左:出入口H付近、右:Gの北側の石垣



左:中央部北東隅、右:中央部を北側から



左:平坦地Cの南側の堀切、右:平坦地Cの東側の土塁



左:窪地D、右:平坦地Cの北端を北下から



左:窪地Eを東上から、右:窪地Eの内部



左:窪地Eの内部の少し南側、右:窪地Eの南壁



左:窪地Eの東壁、右:窪地Eの西端を北から



左:窪地Dの北側に建つ標柱、右:北側の尾根上に建つ標柱



左:砲台の観測所、右:観測所上部の円形窪地A



左:観測所を取り巻く塹壕B、右:塹壕Bの壁面



左:塹壕Bの内側の壁面、階段は後付?、右:観測所の西下の連絡路上に転がるレンガ片



左:砲台の図面に無い広い平坦地、右:第二砲台の弾薬庫付近の兵舎の基礎



右:中央部の拡大図



本来の砲台の観測所の直ぐ北のピークに、石垣で作られた施設がある。どうも観測所を一周する塹壕Bから抜いた石が使われているようで、塹壕の西側には裏石が剥き出しの部分が多くある。

施設の中央部は、円形に近い窪地Fと方形窪地G、そしてそれを結ぶ通路とトンネルから成っており、それらの周りは石垣で補強されている。
窪地Fの中心にはコンクリート製で直径が70cmくらいのほぼ円形をした基礎があるが、アンカーボルトは無かった。窪地Fの内径は3m程なので、探照灯の管制器が置かれていたのかもしれない。方形窪地Gには関連機器が、そしてFとGを結ぶトンネルにはケーブル類が通されていたのだろうか。
東側と北西側に出入口IとHが設けられている。北西側Hは上に石で天板が付けられていたが、現在は崩落してしまっている。
また南側は狭い平坦地になり、中央に方形に組まれたレンガ構造物Jがある。どう見てもバーベキューコンロなのだが、何なのだろか。

中央部の北下には、付属施設跡と思われる平坦地C、窪地D、窪地Eがある。
平坦地Cには南側に堀切、東側に土塁と、まるで中世山城のような遺構で、細かい瓦礫が転がっている。Cの北下には内径が2m程の窪地Dがあるが、何の為の窪地であるかは不明である。
Cの北西下には窪地Eがある。南北5.5m、東西5mの楕円形で、西側からスロープが降りている。台車付きの探照灯を置いていたのかとも考えたが、窪地の東側の壁が高すぎる為にこれだと西方向しか照らせない。よくわからない遺構である。

本来の観測所Aは、良くある明治期要塞のそれそのままである。地元の方の話では「砲台の端の石段の上に探照灯が据えてあった」とのことだが、ここの事を言っているのかもしれない。ただ何らかの手を加えた跡は見えないので実際にどうだったかは判らない。
また観測所Aを取り巻く塹壕Bの壁面からは石が抜かれている。また塹壕の内周側に階段が付けられている部分があるのだが、本来の用途としては不用なものなので、探照灯設置の際に後付されたものかもしれない。

観測所Aのはるか西下を、くの字に曲がった堡塁間の連絡路があるが、このくの字の折れた付近から観測所Aに向かって道らしきものが続いていたり、この少し北東の連絡路上に堡塁の物では無いレンガの破片が多数転がっていたり(この付近に堡塁の建物は存在しない)するので、この付近に発電所等の遺構が残っているのかもしれない。
また第二堡塁の弾薬庫のある平坦地には、明治期要塞では見かけないタイプのコンクリート製基礎があったり、その北西側に堡塁の地図には無い広い平坦地があるが、こういった物も探照灯台の建設の際に付加されたものかもしれない。



最後に、この堡塁一帯は私有地で、松茸や竹の子、山菜が良く採れる場所らしい。こういうこともあって所有者とのゴタゴタが多く、また私有地に本来立ち入るべきではないのだが、それでも立ち入らなければならない事があるとすれば、冬以外には行くべきではないだろう。いや立ち入っては駄目なのだが。




日付 呉海軍警備隊戦時日誌及び引渡目録による記事
昭和19年11月 150cm探照灯1 新設 官房艦機密第5347号に依り工事中
機密呉鎮守府命令第443号
 秋月、吉松山、音戸、情島、新開、飛渡ノ瀬、三高、毘沙門、小仁方に探照灯台設置を令す(呉鎮)
昭和19年12月 探照灯台 工事中
昭和20年1月 探照灯台 工事中
昭和20年2月 新配備 探照灯台
探照灯台 工事中
昭和20年8月31日 引渡:
96式150cm探照灯及び同管制器、付属品補用品共、電動直流発電機 1基

建物:206m2
用地:111688m2、建物:32m2(早瀬第一第二)



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