灰ヶ峰 防空高角砲台





灰ヶ峰 防空高角砲台(2006.4.18、2007.3.21再訪)


米軍の航空写真(R462-39、国土地理院)


右:米軍の航空写真(M2-6-15、国土地理院)


国土地理院の航空写真(1960年頃、MCG628-C24-19)


国土地理院の航空写真(1960年頃、MCG628-C24-19)


探索部分


呉市街の北にそびえる灰ヶ峰山頂にも砲台が築かれていた。
現在では気象庁のレーダ観測施設が建設されているが、広島県戦災史にある昭和39年頃の空撮写真での形状と比べると、現在の施設は砲台の土台をほぼそのまま利用して建設されている事がわかる。
航空写真を見ると灰ヶ峰の東にある630mピーク付近にも円形窪地が2ヶ所写っているが、立ち入り禁止で近寄れず、確認できない。

灰ヶ峰は夜景スポットとしても有名であり、山頂まで車幅のある車道が通じているのでアクセスしやすい。





山頂





左:砲座Aの高石垣、右:砲座Aを西側から



左:砲座A、現在は展望台、右:砲座Aの内部



左:砲座Aを北から、右:砲座AからB方面



左:Bの北西隅、右:Bの北側



左:駐車場から砲座Aを望む、右:砲座Aから駐車場を



左:駐車場付近、右:駐車場の北側の砲座D



左:砲座Dの北面、右:砲座Dの西面



左:砲座Dの出入口跡?、右:同左を上から



左:砲座Dの内側、右:砲座Dの内側、の東側



左:レーダー施設北側の斜面の石垣の残骸、右:山頂を北東側から



左:北東のアンテナ施設、右:東側の山



左:トイレEから山頂を望む、右:平坦地F



左:平坦地Hの北東隅、右:Hを道路側から




山頂には2基の砲座があったが、現在、東側の砲座Aは石垣を利用して展望台に改造され、西側の砲座は駐車場を作るために南半分が破壊されている。砲座Aの内径を測ってみたところ10.5mだったが、当時と内側の構造が違っているので、9m前後くらいかもしれない。また砲座脇の兵舎があった場所には気象観測レーダー施設Cが、航空写真から測距儀等があったと思われるBにはデジタル放送用の施設が建てられている(2006年の春には何も無かった)。
航空写真では便所Eのある辺りに建物が写っているが道路整備で完全に埋め立てられている。その北の平坦地Fは写真にも写っているのでそのままかもしれない。
山頂の北東下のヘアピンカーブの内部にも建物があったのだが、道路整備の際の残土が捨てられてほとんど何も残っていない。またこのヘアピンの東上にも何らかの施設があったようだが、戦後に米軍のヘリポートが建設され、更に今では電波塔が建てられ、跡形も無くなっている。





探照灯周辺




左:円形窪地I、右:円形窪地Iの西側



左:円形窪地Iの西側、土留めの石が並んでいる、右:Iの東側



左:Iの北西に続く登山道の脇に建つ標柱、右:IからJ方向



左:平坦地J、一面の藪、右:Jから山頂方向を望む



左:Jの東下の平坦地、右:同左に転がるコンクリート片




山頂から北西に伸びるなだらかな尾根上に、探照灯関連の施設があったらしい(「黒い盆地」の図による)。藪の中を這いずり回ってみたが、戦後に何らかの施設が造られた際に破壊されてしまったようで、平坦地Jには何も残っていなかった(戦後の施設の基礎は辛うじて残っている)。Jの周囲には整地の際の廃棄物と思われる石やコンクリート・レンガ片が周囲に散乱している。
北西に続く登山道の上に、円形窪地の残骸らしいIがある。薄っすらと中央が凹んでおり、西側には土留めの石が円弧に並んでいるので円形窪地ではないかと思われる。内径は2m程で、探照灯の管制器が置かれていた場所ではないかと思われる。またIから更に北西に伸びる登山道の脇も探索してみたが探照灯台座らしき遺構は見つけられなかった。代わりに呉要塞地区の指定標柱が建っているのを見つけた。
北東斜面には探照灯用の直流発電所があるはずなのだが、藪が酷かったので探索は諦めた。






兵舎・発電所




左:兵舎跡の平坦地(M付近)、右:水槽跡O



左:コンクリート構造M、右:コンクリート構造N



左:コンクリート構造Mに突き出した鉄パイプ、右:コンクリート基礎K



左:兵舎跡を道路から、石碑が建っている、右:発電所奥の水槽Q



左:コンクリート水槽R、右:水溜り、もしかしたら水槽跡?



左:R周辺を北側から、右:平坦地P




山の北斜面にも幾つかの施設が点在している。

道路のすぐ脇の藪の中には、兵舎跡がある。戦後に何らかの施設が建てられたらしく、全てが砲台関係の遺構ではないようである。少なくとも鉄の手摺のある通路Lと残材で作られた基礎Kは戦後のものだろう。
コンクリート構造NとMは何なのか良くわからない。Mの方は上にアンカーボルトや鉄片が出て、なおかつ側面にはネジ山のついた鉄パイプが出ている。西端には水槽跡らしいOがある。

道路から分岐する未舗装の林道の奥に、発電所跡がある。整地されており、建物が建っていた平坦地Pには基礎も瓦礫も残っていない。南側の山の斜面の近くには、発電機の冷却用と思われる大型水槽Qと、小型のコンクリート水槽Rとがある。Rの近くには水溜りがあり、もしかしたらここも水槽の跡かもしれない。




あとは聴音機だが、どこに配置されていたかは不明である。





日付 呉海軍警備隊戦時日誌及び引渡目録による記事
昭和11年2月28日 機密呉鎮第3945号、仮設砲台に対する命令
昭和12年10月7日 官房機密第4101号、機銃砲台に対する訓令
昭和16年11月 防空砲台、第五砲台群(下士官3、兵10)
機密呉鎮守府命令第394号、大向、高烏山砲台8cm砲各1(付属兵器共)灰ヶ峰砲台に移動作業開始
准仕官以上1、下士官兵44、有線電話
8cm高角砲2門、ステレオ式2m測距儀1、シ式75cm探照灯1
焼玉式直流発電機1  
昭和16年12月 兵舎増築及弾薬庫仮設完成
竣工
防空砲台
焼玉式直流発電機1
昭和17年1月 防空砲台  
昭和17年2月 官房機密第1979号訓令に依り呉軍港防空砲台(大向、烏帽子、螺山、灰ヶ峰)変電所新営工事施工の件指令す(呉鎮)
官房機密第2216号訓令に依り大向、烏帽子、螺山及灰ヶ峰防空砲台電気施設増設の件指令す(呉鎮) 
昭和17年3月 防空砲台仮設
将来砲台建設要望
特設見張所 将来要望
昭和17年4月 3年式40口径8cm高角砲2門
3年式機銃2、38式小銃6
ステレオ式2m高角測距儀1
ス式75cm探照灯1
配員 准士1、下士1+4(臨8)、兵12(臨18)
昭和17年6月 探照灯用部外電力用変圧所新設中
昭和17年7月 探照灯、探照灯用部外電力用変圧所新設中
昭和17年8月 8cm高角砲2、3年式機銃2、75cm探照灯1、ス式2m測距儀1
観測鏡2、6倍双眼鏡2、12cm望遠鏡1
S16.12竣工(仮設砲台)
  機密呉鎮3945、仮設砲台に対する命令(11.2.28)
官房機密4101、機銃砲台に対する訓令(12.10.7)
仮設砲台

特設見張所、乙戊(未完成)
電波探信儀1号1基
(電波探信儀1号)訓令官房機密第8712号(17.7.13)
施本機密第13163号(17.5.20)に依り有線連絡の予定(乙)
昭和17年9月 防空砲台第5砲台群
工事施工内報
特設見張所(照聴所を除く)、戊乙工事中  
昭和17年11月 探信所 工事中  
昭和18年1月 防空砲台(第2砲台群)
探信所(乙戊)  
昭和18年9月 艦本機密第3号ノ10906(18.8.13)陸上部隊電波探信儀用電動機換装の件通牒  
昭和18年12月 機密呉鎮守府命令第319号、防空砲台構築準備委員会に於て左の通第一着手として処理に決す、
12.7cm砲台として適、現砲台は他に移設す
昭和19年1月 官房艦機密第157号(19.1.14)「支那方面及内地防空砲台新設並に整備の件」訓令により8cm高角砲2門撤去
昭和19年3月 官房艦機密第157号(19.1.14)「支那方面及内地防空砲台新設並に整備の件」訓令により12.7cm連装高角砲2基 装備工事中
昭和19年6月 12.7cm連装高角砲2基、官房艦機密第157号により装備、7.1試射済、工事続行中
1号電探移装の為、撤去据付箇所上申中
昭和19年7月 12.7cm連装高角砲2基、官房艦機密第157号に依り工事中、全量射撃可
2式電波探信儀移装の為に撤去

機密呉鎮守府命令第235号、昭和19年7月1日(呉鎮)
呉海軍工廠長は左に依り防空砲台照射聴測装置整理移設を実施すべし
白木山砲台→灰ヶ峰砲台
96式150cm探照灯1型陸上用1、同管制器2型1
昭和19年8月 12.7cm連装高角砲2基 官房艦機密第157号に依り工事中 全量射撃可
官房艦機密第3722号(19.6.16)及呉鎮機密第75号ノ32(19.7.29)に依り笠戸島に移装準備中
昭和19年9月 12.7cm連装高角砲2基 官房艦機密第157号に依り工事中 全量射撃可
官房艦機密第3722号呉鎮機密第75号ノ32に依り笠戸島に移装準備中
昭和19年10月 既設探信所、電波探信儀2式1号1型 笠戸島へ移設工事中(官房艦機密第3722号)
12.7cm連装高角砲2基 官房艦機密第157号に依り工事中 全量射撃可
昭和19年11月 12.7cm連装高角砲2基 官房艦機密第157号に依り工事中 全量射撃可
昭和19年12月 12.7cm連装高角砲2基 一部付属装置の外完備
150cm探照灯1、空中聴測装置1 完備
昭和20年1月 12.7cm連装高角砲2基 一部付属装置の外完備
150cm探照灯1、空中聴測装置1 完備
昭和20年2月 12.7cm連装高角砲2基 一部付属装置の外完備
150cm探照灯1、空中聴測装置1 完備
昭和20年8月31日 引渡:
12.7cm連装高角砲2基
2式陸用高射装置 1組
サ式4m高角測距儀付属品補用品共 1組
ステレオ式2m高角測距儀付属品補用品共 1組
96式管制器 1組 (仮設)
96式150cm探照灯及び同管制器、付属品補用品共、電動直流発電機 1基
仮称ヱ式空中聴測装置、付属品補用品共 1基
仮設 12cm高角双眼望遠鏡 2個
焼玉直流発電機110V三相27.5KVA付属品共 1基
建築物 兵舎1、其ノ他付属施設4 

用地:850000m2、建物:260m2



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