戸田 特設見張所(聴音照射所)






2007.1.9 探索

米軍の航空写真(右:R83-2-9、国土地理院)



米軍の航空写真(右:R83-2-9、国土地理院)


山陽自動車道の徳山西ICの南西にそびえる昇仙峰の山頂に戸田聴音照射所跡がある。昇仙峰はハイキングコースとして整備されており、山陽自動車道の切欠斜面上部から頂上までは、恐らく元々軍道だったと思われる、軽トラで登れる幅の広い道が付いている。切欠斜面から先はコンクリート舗装の道路になり、高速道路の側道へ降りている。またこの登山道の入り口は車止めされているので自動車は入れない。麓から頂上まで比高200mで徒歩30分程。

本来の軍道は、航空写真を見ると(上右)北東麓へと下っている。貯水池とポンプ所が不明だが、軍道の北の谷筋にそれっぽいものが写っている。





頂上付近



左:Aのコンクリート基礎、右:同左基礎の拡大



左:AからJ方向への通路、右:BからAを望む



左:平坦地Bの北東隅、右:平坦地Bから兵舎Eを望む



左:平坦地BからC方向、右:平坦地Bの南端の石垣



左:平坦地Cにある方形窪地、右:構造物D



左:構造物D丈夫の基礎、右:構造物Dの昇降路



左:構造物Dからを北方向、右:構造物Dから平坦地G



左、J付近の石垣、右:J付近の石垣その2





頂上付近は直角三角形の形状をしており、2つの頂点部分に探照灯と聴音機の基礎が配置されている。各辺にあたる部分は通路で結ばれており、1つの辺上には詰め所と思われる兵舎がある。

北西の端の頂点上には基礎Aがある。基部は直径90cm、アンカーボルトは8本で対角部分の間隔は70cmである。基礎の形からして聴音機のものと思われるが、これは中野村聴音探照所での碍子からの推測なので確証は無い。基礎を中心にして直径約10mの円形の平面になっているが、西側に土塁らしき土盛りがあるだけで、円形土塁にはなっていない。
平坦地Bは山の最高地だが、構造物があった痕跡は無い。Bの南端は凸に出っ張っており、石垣になっている。何だったかは不明。
平坦地Cは南に向かってなだらかに下っている。1辺50cm程の方形窪地があるが、用途は不明。
南端の頂点には構造物Dがある。円錐台形で石垣で組まれており、上面にはコンクリートの基礎がある。基礎の直径は230cm、基礎内のアンカーボルトは6本で対角部分の間隔は115cm。探照灯の基礎と思われるが操作するスペースが無いため、遠隔操作を行える特別な機材を用いているかと思われるが、詳細は不明。

頂上部の北東隅Jに石垣がある。何に使われていたのかは不明。





頂上付近の兵舎


左:兵舎Eの東側の平坦地、右:兵舎Eの南面



左:兵舎の西面、出入口の1つが潰されている、右:西面の出入口付近の水槽



左:兵舎の東面、サッシをはめている、右:兵舎の北面



左:北側の部屋、床を敷いて囲炉裏を設けている、右:南側の部屋



左:南の部屋の南端にある基礎、右:北側の部屋の南西隅の天井、穴が埋めてある






頂上の東側に兵舎Eが建っている。構造からして中野村聴音探照所とほぼ同じものである。ただここの兵舎は休息所に改装されている。西隅にある塞がれた出入口の脇には用途不明の水槽が、南側の部屋の南隅には用途不明のアンカーボルト付き基礎が2つある。
色々と手が入ってしまっているが、徒に不気味さを漂わせるだけよりかは、こうして一般の登山客にも利用してもらえた方が良いのだろう。

それから頂上部にトイレ関連の施設が見当たらなかった。見落としているのかもしれない。




東下の平坦地周辺


左:生活用水の水槽F、右:水槽Fを東下から



左:兵舎があったと思われる平坦面G(北から)、右:同左(南から)



左:平坦地Gの北端にある水槽と洗い場、右:同左のアップ



左:平坦地Gの西側斜面にある防空壕(北側)、右:同左の内部、南に折れて続いている



左:西側斜面の防空壕(南側)、右:同左の東側にある方形窪地



左:発電施設があったと思われる平坦地H、右:同左にある二連式水槽



左:平坦地Hの北端にある油脂庫、右:油脂庫を西から



左:北東隅の軍道脇にある軍標その1、右:その2




東下には生活用の兵舎があったと思われる平坦地Gと、発電施設があったと思われる平坦地Hとがある。
平坦地Gの北西上には、生活用水向けと思われるコンクリート製水槽が2基並んでいる。平坦地Gの北端にはコンクリート製の水槽と、洗い場らしきものがある。また西側の斜面には防空壕が南北に2ヶ所掘られている。内部は崩壊しそうなので入れないが、兵舎Eの真下辺りに地下室があるのではないかと思われる。南側の防空壕のまん前には方形窪地がある。
端から端まで歩いてみたが、兵舎の基礎のようなものは見当たらなかった。桜が植樹されているので、その作業の時に取り去られてしまったのだろうか。
平坦地Hには油脂庫と二連式水槽があるので、発電施設があったと思われる。一面ススキが生えており、兵舎の基礎があるかどうかは不明。





その他



左:登山道脇の平坦地、右:頂上から徳山湾方向を望む



登山道の脇に、幾つかの平坦地がある場所がある。何らかの施設があったのかもしれないが、基礎のようなものは見当たらなかった。


日付 呉および徳山警備隊戦時日誌と引渡目録による記事
昭和16年11月 聴測照射所、第六砲台群、工事中
昭和16年12月 聴測照射所 工事中
官房機密第11482号(16.12.5)
昭和17年1月 聴測照射所 工事中
昭和17年3月
(昇仙峰)
特設見張所 既設
昭和17年8月
(富海)
96式150cm探照灯1型陸用及管制器2型陸用1
仮称ヱ式空中聴音装置1
12cm高角双眼望遠鏡1
昭和17年9月 特設見張所(聴測所)、丁乙工事中
昭和18年1月 聴測所(丁) 徳山支隊
昭和19年6月 既設照聴所
昭和19年7月 既設照聴所
昭和19年8月 既設照聴所
昭和19年9月 既設照聴所
昭和19年10月 既設照聴所、150cm探照灯1、空中聴測装置1
士官、准士官1、下士官兵27(19.10.20)
昭和19年11月 150cm探照灯1基
昭和19年12月 150cm探照灯1基
昭和20年3月 13mm単1門 3月末据付完了
昭和20年4月 13mm単1門 現装
昭和20年5月 96式150cm探照灯 1基
13mm単1門 既設
昭和20年8月31日 引渡:
96式150cm探照灯(100V) 1基
仮称ヱ式空中聴測装置 1基
ディーゼル交流発電機陸上用40KVA三相 配電盤付 1基

用地、4950m2
指揮所他、木造9棟、417m2

用地:1441m2、建物:436m2(富海)



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