笠戸 防空高角砲台、深浦電波探信所、深浦特設見張所


2013.2.24 探索





米軍の航空写真(M114-37、国土地理院)


米軍の航空写真(M114-37)


米軍の航空写真(M114-37)



笠戸島の高壷山周辺に笠戸防空高角砲台と深浦特設見張所が配置されていた。
現在も比較的良く残っており、最近になって遊歩道も整備され、探索しやすくなっている。

高角砲座を中心にし、左右に聴音照射所を構えた、中期の高角砲台に良く見られる構造をしているが、左翼の聴音照射所は工事途中の状態であり、右翼の聴音照射所は特設見張所、そして後には電波探信所となっている。高角砲台の建築は昭和17年1月の官房艦機第1152号で建築が開始されているが、右翼の位置にある深浦特設見張所は昭和16年11月の段階で工事中であり、昭和17年頭には完成している。しかも高角砲台の方は昭和17年8月に一度工事が中止されている。
その後、昭和18年に入ると再び高角砲台の工事が再開されるものの進まず、工事中の文字は昭和20年5月の戦時日誌まで続いている。一方で先に完成していた深浦特設見張所には昭和19年8月に灰ヶ峰から11号電探を移設し、その後13号電探も追加され、昭和19年11月以降は深浦特設見張所の記事が消えて、深浦電波探信所の記事のみとなっている。この事から、聴音照射所(夜間の敵機の位置を聴音機で探り、探照灯を照射する)としてではなく電探による警戒へと機能が変化したようである。
しかし、防空砲台としての引渡目録には聴音機と探照灯とが1基づつ入っている。左翼側の聴音照射所は工事途中で基礎が存在せず、また他に設置された場所も無いことから、この聴音機と探照灯は右翼の特設見張所に設置されていたものと思われるが、11号電探と探照灯の位置が20m程と近く、5m前後の高低差があったとしても電探に悪影響は無かったのかと心配させられる。11号電探の設置場所は高壷山山頂で良かったのではないか。

ともかく、防空砲台の聴音照射所と特設見張所とが兼用されていたことは、他では例が無く珍しい事である。



変遷
時期 右翼 中央部 左翼
昭和16年以前の予定? 聴音照射所(右翼) 防空砲台 聴音照射所(左翼)
昭和16年末 深浦特設見張所(工事中) 未定 未定
昭和17年 深浦特設見張所 防空砲台(未着工→中止) 聴音照射所(未着工→中止)
昭和18年 深浦特設見張所 防空砲台(工事再開) 聴音照射所(工事再開?)
昭和19年前半 深浦特設見張所 防空砲台(工事中)
昭和19年後半 深浦電波探信所(電探追加) 防空砲台(工事中)
昭和20年前半 深浦電波探信所 防空砲台(工事中)




2013年の冬に、山口で中世城郭を中心に史跡調査をされているY勘さん(よく出てくるYさんとは別の方)と、笠戸島出身で戦争当時の砲台をご存知の古老Hさん、そしてHさんのお知り合いの計6名が山に探索に入られるのに、同行させていただいた。





一覧:


 中央部(高角砲、兵舎)


 右翼部(特設見張所、兵舎)


 左翼部(聴音照射所、左翼)


 発電所






笠戸 防空高角砲台
日付 呉海軍警備隊戦時日誌及び引渡目録による記事
昭和17年1月27日 官房艦機第1152号
昭和17年8月 89式12.7cm連装高角砲3基 工事未着工
95式射撃盤1、94式4.5m測距儀2 未
96式150cm1型陸用探照灯及管制器2型2 未
仮称ヱ式空中聴音装置2 未
12cm高角双眼望遠鏡5 未
官房艦機1152号(17.1.27)の所、官機1152ノ2により笠戸島は削除
施設機密第13179号(17.6.2)に依り訓令資料請求
昭和17年10月 訓令資料提出
昭和18年1月 防空砲台工事中 徳山支隊
昭和18年2月17日 新設工事施工内報
昭和18年4月 基礎工事中(施設内報接受)
昭和18年5月 官房機密第1152号(17.1.27)兵器関係基礎工事施工訓令
施本機密第1602号(18.2.26)新設工事施工内報
基礎工事中
昭和18年6月 基礎工事施工訓令により工事中
昭和18年9月〜11月 防空砲台工事中
昭和19年10月 12.7cm連装高角砲2基 官房艦機密第6379号に依り工事中
12.7cm連装高角砲2基 基礎工事概既設済、官房艦機密第6379号
士官1、准士官1、下士官兵36(19.10.20)
昭和19年11月 12.7cm連装高角砲2基工事中、官房艦機密第6379号
150cm探照灯1基
昭和19年12月 12.7cm連装高角砲2基工事中、官房艦機密第6379号
昭和20年1月 12.7cm連装高角砲2基工事中、官房艦機密第6379号
昭和20年2月 12.7cm連装高角砲2基工事中、官房艦機密第6379号
昭和20年3月 12.7cm連装高角砲2基工事中、官房艦機密第6379号
昭和20年4月 12.7cm連装高角砲2基工事中、官房艦機密第6379号
13mm単1門
昭和20年5月 12.7cm連装高角砲2基工事中、官房艦機密第6379号 13mm機銃1丁、96式150cm探照灯1
昭和20年8月31日 引渡:
12.7cm連装高角砲 2基 96式150cm探照灯(100V) 1基
仮称ヱ式空中聴測装置 1基
94式4.5m高角測距儀 1基
40KVAサイクル3相配電盤付ディーゼル発動機1基

用地、1200m2
兵舎他、木造12棟、947m2

用地:49590m2、建物790m2

用地:1662m2、建物:449m2(深浦特設見張所)




深浦 聴音探照所
  
日付 呉海軍警備隊戦時日誌及び引渡目録による記事
昭和16年11月 聴測照射所、工事中
昭和16年12月 聴測照射所、工事中
官房艦機第11482号(S16.12.5)
昭和17年3月 特設見張所 既設
昭和17年8月 特設見張所(丁)既設
96式150cm探照灯1型陸用及管制器2型陸用1
仮称ヱ式空中聴音装置1
12cm高角双眼望遠鏡1
昭和17年9月 特設見張所(聴測所)、丁乙工事中
昭和18年1月 聴測所(丁) 徳山支隊
昭和19年6月 既設照聴所
昭和19年7月 既設照聴所
昭和19年8月 既設照聴所
昭和19年9月 既設照聴所
昭和19年10月 既設照聴所、150cm探照灯1、空中聴測装置1




笠戸 電波探信所   
日付 呉海軍警備隊戦時日誌及び引渡目録による記事
昭和19年8月 官房艦機密第3722号(19.6.16)及呉鎮機密第75号ノ32(19.7.29)に依り
 灰ヶ峰より移装準備中
昭和19年9月 官房艦機密第3722号呉鎮機密第75号ノ32に依り工事中
昭和19年10月 既設探信所、電波探信儀2式1号1型 移設工事中(官房艦機密第3722号)
昭和19年11月 電波探信儀2式1号1型1基 工事中(官房艦機密第3722号)
昭和19年12月 新配備 2式1号1型1
2式1号1型1基 3式1号3型(教育用) 工事中
昭和20年1月 2式1号1型改一1、3式1号3型1 教育用工事中
昭和20年2月 完備 3式1号3型1、2式1号1型1
昭和20年8月31日 引渡:
電波探信儀 既装2
仮称2式1号1型電波探信儀1
仮称3式1号3型電波探信儀1
TM短移動電信機改四2
8cm高角望遠鏡
99式小銃5(弾780)
兵舎4棟




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