白木山 防空高角砲台



2014.6.25 一部修正
2015.2.10 一部修正
2016.9.8 佐連山、伊崎山の聴音所について情報追加



2006.5.14 探索


全体図(白木山(中心部、砲座)、伊崎山(右翼聴音照射所)、佐連山(左翼聴音照射所)

周防大島の白木山山頂を中心にして、白木山防空高角砲台が造られていた。現在は公園になっており頂上付近まで車で登れるが、遺構は殆どが破壊されている。ただ、破壊したコンクリート片は残されており、辛うじて当時の面影をしのぶことができる。



白木山のあった東和町史によると、建設決定が昭和16年で、村民(殆どが女性)が労働、そして昭和16年11月に、それまでの家室西方村を砲台にあやかって白木村に改名し、昭和16年12月には自動車道路が開通した、とある。







白木山(中心部):


右:米軍の航空写真(M893-A-76、国土地理院)


米軍の航空写真(左:M893-A-76、右:M176-2-1、国土地理院)


白木山山頂には当初は高角砲台が、後に聴音照射所が置かれた。航空写真を見ると、山頂広場から北東下の広い斜面付近に聴音照射所特有の聴音機窪地と指揮所の建物が見える。また現在の駐車場辺りには兵舎等の建物が写っている。
山頂から南へ続く尾根上にも施設らしいものが写っているが、関連したものかどうかは不明。応急教育施設かもしれない。





伊崎山(右翼聴音照射所)


右:米軍の航空写真(M176-2-1、国土地理院)


左:米軍の航空写真(M856-8、国土地理院)、右:国土地理院の航空写真(1960年代、MCG654X-C9-18)


全くのノーマークだったのだが、「周防大島郷土研究双書2 彫刻家林健、周防大島戦争遺跡案内」(周防大島町文化振興会)内の「周防大島戦争遺跡案内」(佐藤正治著)にて、「特設見張所(伊崎 伊崎山 頂上付近)」として書かれていたものを、山口で郷土研究をされているYさんが見つけ、実際に何度か伊崎山に登って探索を行い、探照灯と管制機の基礎や複数の建物の基礎、水槽などを発見したことを教えていただいた(記事1記事2)。この事から、この時期の砲台が生真面目に侵入方向に2ヵ所の聴音照射所を造っていたことに改めて気づかさせられた。
航空写真を見ると、伊崎山の西に施設らしいものが写っている。南西に伸びる尾根上には探照灯と管制機の遺構があったものの聴音機壕は無いことから、航空写真の北西に伸びる尾根上の円形窪地のようなものが聴音機壕の可能性がある。また北西へと伸びる軍道も写っている。


2015.2.10 追記
佐連山のレンガ建物の状態から、航空写真の聴音機壕のようなものは、掘りこまれた平坦地と同様な建物ではないかと思われる。となると聴音機はどこに?ということになるが、大平山と同じく、よく見られるような直径15m程の擂鉢状窪地ではない形状をしていたのかもしれない。





佐連山(左翼聴音照射所)


右:米軍の航空写真(M176-2-1、国土地理院)


米軍の航空写真(左:M856-7、右:M893-A-76、国土地理院)


伊崎山が判明して、慌ててもう1ヵ所の聴音照射所の候補地を航空写真で調べてみたところ、伊崎山の東、白木山からだと南東にある佐連山の山頂から南東に少し下った辺りに、施設らしいものが写っている。また伊崎山程明確ではないが、東斜面を北方向へ下る軍道らしいものも写っている。


2015.2.10 追記

伊崎山と同様に、Yさんが探索されたところ、遺構を発見されたそうである。(記事1記事2記事3
探照灯用の直流発電機用の建屋と思われるレンガ造りの建物が残っていて、興味深い。航空写真の北西端にある、一見聴音機壕と聴音機残骸のような物体は、どうも掘り込まれた平坦地に建つ、このレンガ建物だったようだ。また聴音機壕は見つからなかったようである。







伊崎山と佐連山の聴音照射所について 2016.9.8 追記


Yさんから、徳山高専の工藤先生(退職されたらしいので元先生だが)が白木山砲台の2ヶ所の聴音照射所について探索した結果を、山口県地方史研究に発表したということを教えていただく。

「周防大島の佐連山と伊崎山にあった聴測照射所」
 工藤洋三著 山口県地方史研究 第115号 別冊 2016年6月




この論文から気づかされた事などを別途「海軍の聴音機の設置方法についての考察」としてまとめておく。










白木山山頂:





左:砲座Aの跡、右:西下斜面に剥き出しになった砲座Aの外壁の残骸



左:砲座Aの砲側弾薬庫の残骸、右:同左



左:砲座Aの西にある土盛(社が建つ)、右:砲座Aの南側にある探照灯のコンクリート基礎D



左:砲座Bの跡、右:砲座Bの砲側弾薬庫の残骸



左:砲座Bの砲側弾薬庫の残骸、右:同左



左:砲座Cの砲側弾薬庫の残骸、右:同左



左:砲座C脇の展望台、右:西方向の展望



左:北東に延びる平坦地、右:同左の東屋付近のコンクリート片F



左:道脇に辛うじて残る水槽E、右:同左内部



左:駐車場、右:陸奥記念館の14cm副砲



左:陸奥記念館の野外展示品、右:14cm副砲


白木山防空砲台は戦前に造られた初期の防空砲台の一つである。呉から離れすぎていた為、昭和19年頃の再編成の際に対空見張所兼練習用機銃砲台に格下げされている。

周防大島の東端という辺鄙な場所にあるものの、一応山頂まで県道が通じているが、行った際(2006年5月)は土砂崩れの工事中で通行止めになっていた。道が軍道のほぼそのままの車幅で路肩があちこちで崩れているため、行くなら軽自動車にして方がいい。というか本当に県道か?という程に道が悪い。
苦労して登ったのだが、頂上はほぼ完全に公園化されてしまっていた。砲座も半分破壊され、よく見なければ砲座があったことなど判らない。一応3基の砲座と、探照灯のコンクリート基礎、そして道脇に辛うじて残る水槽が残る他は跡形も無い。砲座の破片が残してあるだけでも良い方かもしれない。




おまけ:陸奥記念館
白木山から更に東へ15km、周防大島の最東端に陸奥記念館がある。折角周防大島くんだりまで来たのだからと行ってみた。展示品は面白いものが多いのだが、場所が悪すぎる。


日付 呉海軍警備隊戦時日誌による関連記事
昭和15年9月11日 官房機密第6287号
昭和16年6月 竣工
昭和16年11月 防空砲台、第三砲台群(下士官11、兵19)
准仕官以上3、下士官兵96、有線電話
12.7cm高角砲4門、サ式4m測距儀1、150cm1型陸上用管制器付2
ディーゼル交流発電機2、電動直流発電機2、一部未完成
准士官以上4、下士官19、兵80
150cm探照灯2、聴音機2
 
昭和16年12月 防空砲台(S16.12)
ディーゼル交流発電機2 
昭和17年4月 89式40口径12.7cm連装高角砲4基(4門の間違い?)
サ式4m高角測距儀1
96式150cm1型陸用探照灯及管制器2
仮称ヱ式空中聴音装置2
38式小銃6、14年式拳銃2
配員 下士8(臨18)、兵17(臨46)
昭和17年8月 12.7cm連装高角砲2基、150cm探照灯(管)2、仮称ヱ式聴測装置2、サ式4m測距儀1
12cm高角双眼望遠鏡2、8cm高角双眼望遠鏡1
7倍双眼鏡2、柱島経由直通有線電話
砲座3基の所2基装備
昭和17年9月 防空砲台第3砲台群、白木山特設見張所  
昭和18年1月 防空砲台(第4砲台群)  
昭和18年8月 艦本機密第1号ノ11726号(18.8.30)、防空砲台に高射装置装備の件照会により95式陸用高射装置を装備
昭和19年3月 官房設機密第641号により下士官兵戦時要員教育応急施設として兵舎構築中
既設大向白木山高角砲台砲撤去照聴所として残置  
昭和19年6月 官房設機密第641号により下士官兵戦時要員教育応急施設として兵舎構築中(練習生収容しあれり)
普通科砲術練習生第98期対空機銃班188名6-8月
既設照聴所
昭和19年7月 官房設機密第641号に依り下士官兵戦時要員教育応急施設 完成
既設照聴所

機密呉鎮守府命令第235号、昭和19年7月1日(呉鎮守府、S19.7)
(記事は白木山関連の部分のみ抽出)
呉海軍工廠長は左に依り防空砲台照射聴測装置整理移設を実施すべし
白木山砲台→光砲台
96式150cm探照灯1型陸上用1、同管制器2型1、仮称ヱ式空中聴測装置1
白木山砲台、仮称ヱ式空中聴測装置1基は撤去保管し探照灯供給の際備考(2)に依り整備す
備考:(2)新設砲台に該兵器供給の場合は光砲台の1組を白木山照射所に装備する外元の砲台付近の所要の箇所に装備す
(光砲台に当初配備予定の探照灯が装備された場合、仮移設の探照灯を白木山へ戻す、ということか)
 
昭和19年8月 既設照聴所
対空見張所 工事中
昭和19年9月 既設照聴所  
昭和19年10月 既設照聴所、空中聴測装置1
昭和19年11月 空中聴測装置1 完備  
昭和19年12月 150cm探照灯無し、空中聴測装置1 完備
昭和20年1月 150cm探照灯無し、空中聴測装置1 完備
昭和20年2月 白木山・亀ヶ首のヱ式空中聴測装置各1を三高、小仁方に移設を令す、呉鎮(S20.2.2)  
昭和20年8月31日 引渡:
建築物 兵舎4、其ノ他付属施設4

用地:23345m2、建物:1282m2




白木山練習部
日付 呉海軍警備隊戦時日誌による関連記事
昭和19年3月 兵舎構築中
昭和19年6月 兵舎構築中(教育応急施設)
昭和19年7月 教育応急施設 完成
昭和19年8月 13mm連装機銃2基 13mm機銃8門 応急 工事中
昭和19年9月 13mm連2基 13mm単8門、既設(応急分散)
25mm連装機銃3基 練習生用
昭和19年10月 既設 25mm連3基 訓練用
既設 13mm連2基、13mm単4門 (応急分散)
昭和19年11月 25mm連3基(教務用)、13mm連2基 13mm単4門(応急分散)




白木山 対空見張所
日付 呉海軍警備隊戦時日誌による関連記事
昭和17年4月 対空見張所新設工事S17.5.31竣工予定
昭和17年8月 対空見張所 乙(既設)
8cm望遠鏡1、12cm望遠鏡2、7倍稜鏡2
訓令官房機密第4255号(17.4.7)
昭和17年11月 対空見張所工事中
昭和18年1月 見張所(第4砲台群)
昭和19年8月 対空見張所 既設
昭和19年12月 対空見張所
昭和20年1月 対空見張所
昭和20年2月 対空見張所





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