対水上見張用電探




2009.3.6 新規作成
2015.5.29 蓋井島(堂山)を追加


戦争末期にかけて、対水上用見張電探所も多数築かれたらしい。
偶々、蒲生田特設見張所を探索する機会があり、また足摺に行く途中に須崎の見張所を訪れたので、とりあえずまとめてみた。
一応主方向としては防空系に絞っておきたいので、これ以上広げる気もあまり無い。




・装備
22号、32号、31号といった辺りが資料に出てくる。





22号電探


左:潮岬に配備された、恐らくは22号電探、右:同左、(共に国会図書館蔵マイクロフィルム[1]

元々は艦載用の電探なのだが、大戦末期には載せる艦艇も消え失せた為に陸上用に改造をしていたようで、上のような写真が残っている。残念ながらこの写真の電探に関する資料はまだ見たことが無い。


艦船・潜水艦用対水上見張兼射撃用
完成年月日:19.9
終戦時、実戦
装備場所:水上艦船、潜水艦
波長10cm、尖頭出力2KW、測定方式:最大感度法
送信機発信回路:マグネトロン、受信機検波管:鉱石
電磁ラッパ円形断面開口径80
最大有効距離:戦艦で35km・駆逐艦で17km、最小有効距離:1.5km
測距精度:0.5km、測角誤差:3度
重量:4320kg(水上艦)、製造会社:日本無線、日立製作所、製作台数:300
(日本無線史)[2]






32号電探


左:電測学校の32号電探(国会図書館蔵資料[3])、右:32号電探(写真集「日本大空襲」[4]より)

昭和20年6月の電探リストにやたらと出てくるのが、この32号電探。艦上用ですでにこの大きさで、そのまま陸上用に転用されたもののようである。


2号3型(ドイツ方式、UHF波利用の新鋭機)とほぼ同時に完成したもので、@大型矩形電磁ラッパ及び矩形導波管採用、A電探機器室上部に電磁ラッパを装備し、機器と共に旋回させる、B電磁ラッパは3個とし、中央を送信、左右を等感度方式受信用とするなど、最新の技術を投入して試作され性能は良好だったが、重量と容積過大の為に沿岸用に転用されることになった。(日本無線史)[2]

3号2型は出来る限り能力の増大をはかるため、従来採用した電磁ラッパのみを回転する方式を廃し、機器も電磁ラッパと共に回転する方式とし、且つ偏波面を整正にする目的を以って矩形電磁ラッパを採用し、且つこれを大型となし、空中線利得を20数dbに増大した。左右2個の受信磁気ラッパの切換装置としてはラッパの喉元で半円形のアルミニウム板を電動機で回転して行う方式を用いている。(日本無線史)[2]


艦船用対水上射撃用
完成年月日:19.9
終戦時、実用準備中
装備場所:陸上及び大型艦
波長10cm、尖頭出力2KW、測定方式:等感度法
送信機発信回路:マグネトロン、受信機検波管:鉱石
送信:角型ラッパ1、受信:角型ラッパ2
最大有効距離:戦艦で30km、最小有効距離:1.5km
測距精度:0.1〜0.25km、測角誤差:0.5度
重量:5000kg、製造会社:日本無線、日立製作所、製作台数:60
(日本無線史)[2]








その外、31号及び33号

3号1型は、3号2型が重量、容積大で、非現実的であるとの非難に対し、2号3型に使用した架台並びに反射鏡を使用し、導波管を架台内部に納め、本体は同軸ケーブルを用いて接続し、空中線装置のみを回転する方式のものである。
3号3型は既装備の2号2型に小改造を施し、従来の有効距離を短縮することなしに、測角、測距精度を要求値に高めんとし、従来の旋回装置に短形電磁ラッパを取り付け、受信電磁ラッパを円筒式切換器によって切替え、旋回部に二重同軸ケーブルを用いて従来の導波管をそのまま使用するものである。
しかし3号1型および3号3型はいずれも完成の時期を失し、実装備を見ずして終戦となった。(日本無線史)[2]





参考文献
[1] 国会図書館 マイクロフィルム資料 USB13-R316
[2] 日本無線史 第10巻 電波監理委員会
[3] 国会図書館 マイクロフィルム資料 USB13-R341A
[4] 「日本大空襲」、月刊沖縄社
[5] 「電探関係配備一覧表」 E兵器540 防衛省戦史資料室/蔵





特設見張所 辛 現状 (「電探関係配備一覧表」[5]より)

軍令部弐機密第143号(昭和20年3月1日)
軍令部弐機密第501号(昭和20年6月6日)

(あくまでも当時の記録で、最終的な配備・装備ではない。以下同様)
(またD及びdは何を指しているのか不明。電波探知機のことなのだろうか。)
所管所属配備地装備対潜○
特攻△
訓令記事
大湊警西能登呂岬32 d518既設見張所に兵器人員を増強す
宗谷防宗谷岬31○△? 518
大湊警恵山岬31○△518既設見張所戊に兵器人員を増強す
大湊警尻矢崎31○△518既設見張所戊に兵器人員を増強す
大湊防白神岬31
(32 or22)
518見張所辛として新設す
大湊防龍飛岬31 or22○△? 518見張所辛として新設す
女川防金華山22(32)518既設見張所戊に兵器人員を増強す
横警塩屋崎22(32)518既設見張所戊に兵器人員を増強す
横警犬吠崎22(32)518既設見張所戊に兵器人員を増強す
横警勝浦22(32)518既設見張所戊に兵器人員を増強す
横防大島22(32)○△518既設見張所戊に兵器人員を増強す
横防御蔵島22518既設見張所戊に兵器人員を増強す
横防新島22518既設見張所戊に兵器人員を増強す
横防御前崎22○△518既設見張所戊に兵器人員を増強す
横警石室崎22○△518既設見張所戊に兵器人員を増強す
横警大王崎22(32)○△518既設見張所戊に兵器人員を増強す
三海護三木崎22 d見張所戊を辛とす
三海護江須崎22 d見張所辛として新設す
紀伊防潮岬22(見張所戊のリストに記載)
紀伊防蒲生田崎22(32) d○△518見張所辛として新設す
紀伊防日ノ御崎22(32) d518見張所辛として新設す
23zg須崎22 d518見張所辛として新設す
5SZ細島22 d518見張所辛として新設す
佐伯防沖島22(32)○△518既設見張所戊に兵器人員を増強す
佐伯防深島22(32)518既設見張所戊に兵器人員を増強す
下関防蓋井島22(32) d518見張所辛として新設す
九州空都井岬22(32)518既設見張所戊に兵器人員を増強す
九州空種子島22○△518既設見張所戊に兵器人員を増強す
沖根口永良部22○△既設見張所戊に兵器人員を増強す
佐防佐多岬22(32)○△518既設見張所戊に兵器人員を増強す
佐防大瀬崎22(32)既設見張所戊に兵器人員を増強す
佐防野母崎22(32) d既設見張所戊に兵器人員を増強す
佐防宇久島22(32) d518既設見張所戊に兵器人員を増強す
佐防生月島22(32) d518見張所辛として新設す
対警壱岐(若宮)22(32) d○△518見張所辛として新設す
対警沖島22(32) d○△518見張所辛として新設す
対警神崎D(32)○△518見張所辛として新設す
対警海栗島D(32)○△518見張所辛として新設す
対警郷崎D(32) d518見張所辛として新設す
鎮防毎勿島D(32)○△518見張所辛として新設す
鎮防所音島D(32)○△見張所辛として新設す
鎮防済州島東D(32)○△518見張所辛として新設す
鎮防牧ノ島D(32)518見張所辛として新設す
鎮防長鬚?岬D518見張所辛として新設す
鎮防巨文島D518既設見張所戊に兵器人員を増強す
鎮防済州島西D(32)○△518見張所辛として新設す、付近に戊無き為に
遠距離航空探知用として13号を増備す




水上見張電探班配備一覧表

所管所属配備地装備
舞防観音崎32 D
舞防生地鼻32 D
舞防立石崎32 D
舞防新潟32 D
舞防禄剛崎32 D
舞防経ヶ岬32
鎮防長鬚?岬32





水上射撃電探班配備一覧表

所管所属配備地装備装備砲数
横1警観音崎3215.5x2 12x2
横1警千駄崎3212.7x3
横1警江ノ島3214x2 12.7x2
伊勢防伊良湖3215.5x2
紀伊防淡路由良3215x3
紀伊防加太深山3215x2
佐警撮宿郡摺ヶ浜3215x2
佐警肝属郡植木3215x2



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