烏帽子山 防空高角砲台・聴音探照所





烏帽子山 防空高角砲台・聴音探照所(2006.4.14、2007.3.29再訪)


右:全体図


左:米軍の航空写真(R462-12、国土地理院)


呉市にある(天応)烏帽子山の一つ北のピーク(391m)から北側にかけて、防空高角砲台とその付属施設が分布している。山の北東麓にある呉市野外活動センターから烏帽子山にかけて立派な登山道が整備されているが、比高が200m近くあるので30分弱は見ていたほうが良い。

砲座らしきものが北に2基、南の391mピーク周辺にその他の施設が配置されている。
防空高角砲台として建設されたが、後に高角砲を他へ移設して聴音探照所になっている。



砲台北部






左:砲座Aを北東下から、右:砲座Aの内部



左:砲座Aのコンクリート基礎、右:砲座Aの南西縁



左:内側も石垣、右:砲座A内部を南西から



左:砲座Aの東側の石垣、右:砲座Aの南西下の土塁


北側の尾根上に、砲座Aがある。周りを高石垣で囲むことで崩れやすい土質の尾根の上に高い位置を確保している。内側も石垣で土留めをしており、内径8mの中心には直径約95cmのコンクリート基礎がある。基礎には8本のアンカーボルトが植えてあり、対角長は約70cmである。また砲座Aの南西下には平坦地とそれを囲む土塁とがある。

初めはこのコンクリート基礎が3年式8cm高角砲の基礎だと思っていたのだが、もう一ヶ所のコンクリート基礎とここの基礎とが大きさやアンカーボルトの数で違っていることから、別のものの可能性がある。これまでに調査したコンクリート基礎の寸法からみてみると、アンカーボルト8本で対角長70cmは仮称ヱ式聴音機の基礎である可能性が高く、この砲座Aの基礎は高角砲移設後に移設された聴音機ではないかと思われる。8cm高角砲の砲座を利用して聴音機を置いたのか、それとも聴音機用に新しく造ったのかは不明である。





砲台中部




左:砲座Bを南から、右:砲座Bの土塁を北側から



左:砲座Bのコンクリート基礎、右:砲座Bから南側を、右に土塁



左:平坦地Cの西側から北を、右:平坦地C



左:平坦地Cの北東側の土塁、右:左側に円形窪地Dの土塁



左:円形窪地Dの内部、右:円形窪地Dの北縁



左:円形窪地Dの土塁上から平坦地Cを、右:円形窪地Dの南東側の出入口



左:円形窪地Dから平坦地Eへ向かう通路、右:平坦地E、一面の藪



左:標柱F、上が西方向、右:平坦地Eを遊歩道から





砲座Aからしばらく尾根沿いに南下すると、一連の施設跡に出る。
北端に砲座Bがある。西半分だけに土塁が円弧状にあり、土塁北側には石垣がある。円弧の中心には直径約90cmのコンクリート基礎があり、6本のアンカーボルトが対角長約65cmで植えられている。基礎の中心から土塁の内側までは約180cmである。

ここも初めは2つ目の砲座かと思っていたのだが、砲座Bの基礎と砲座Aの基礎とは大きさもアンカーボルトの数も違う上に、砲座Bの基礎から土塁内側までの距離が2m以下と、高角砲を操作するにはあまりにも狭い。これまでに調査したコンクリート基礎の大きさからみてみると、情島聴音探照所の小さい方のコンクリート基礎と大きさと形が良く似ている。情島の小さい方のコンクリート基礎は探照灯の管制器の可能性が高く、砲座Bの基礎も同様に管制器のものかもしれない。ただ他に管制器らしいコンクリート基礎の情報が無いので、推測の域を出ることはない。

砲座Bから少し南に行くと、遊歩道の東側に平坦地Cがある。北東、西、南東と3方向に土塁があり、内径が約7mの円を描くことができるので、もしかしたら砲座か何かの跡かもしれないが、中心部を少し掘ってみたもののコンクリート基礎らしきものは見つからなかったので、気のせいかもしれない。
平坦地Cのすぐ南には円形窪地Dがある。南東側に出入口があり、内側には円形に石垣が組まれており、西側に石垣が方形に出っ張っている。石垣の内径は約2.3mで、石垣の外側には土塁が回っている。
円形窪地Dから南東へ降りると、平坦地Eがある。現在は藪に埋もれており、兵舎の基礎等が残っているかは判らない。また東下へ降りる道らしきものがあり、途中には海軍の標柱Fが建っている。道を下ってみたが、これといったものは見つからなかった。





砲台南部





左:平坦地Gの南側の石垣、右:平坦地G



左:平坦地Gの水槽、右:平坦地Gの北東端



左:円形窪地Hを遊歩道から、右:円形窪地Hの内部



左:平坦地I(右下)、右:平坦地I(右)と円形窪地H(左)



左:円形窪地Hの西側から遊歩道を南に望む、右:円形窪地J



左:円形窪地Jの内部の底付近、右:円形窪地Jの内部



左:円形窪地Jの北側の方形の出っ張り、右:同左



左:平坦地K、右:円形窪地L



左:M付近のコンクリート製遺構、右:M付近の水槽



左:M付近の標柱、右:M付近の窪地



左:M付近の石垣、右:M付近の石垣





左:窪地Nの南側、右:窪地Nの北側



左:平坦地Oの南側の石垣、右:平坦地Oの北側の石垣



左:円形窪地P(東側)、右:円形窪地P(西側)



左:円形窪地Pを内部から、右:円形窪地Pの底



左:方形窪地Q、右:方形窪地Qの東側の壁面



左:方形窪地Qを西側から、右:方形窪地Qの上から平坦地Rを見下ろす



左:平坦地Rを遊歩道側から、右:平坦地S



左:平坦地Sの南内側の石垣、右:遊歩道脇の標柱T




平坦地Gにはコンクリート製水槽がある。南側は石垣で補強されているが現在は崩れている。兵舎の残骸らしきものは確認できなかった。
その南上には円形窪地Hがある。土塁で高くなっており、内径は約2.5mである。北側が開いており、底に溝らしきものがこの開口部に向かって伸びているが、何があったのかはよく判らない。
Hの東下には平坦地Iがある。この東側にも何かあるかもしれないが、藪が酷くて進めなかった。
Hの南には円形窪地Jがある。内径約4.5mで、底の方が方形に形成されている。北側には方形の出っ張りがあり、内側をコンクリートと石垣で補強してある。出っ張りの幅は約2.4mである。
Jの南には平坦地Kがあるが、藪が酷くて東側がどのくらいまであるか判らない。Kの南には内径が約1.5m程の円形窪地Lがある。
遊歩道を挟んで西側の緩斜面にも、幾つかの遺構がある。M周辺には水槽や石垣、窪地、標柱等の細かな遺構が点在している。中には南北の壁面を石垣で補強した窪地Nや平坦地O等もある。
遊歩道の着き当りに円形窪地Pがある。内径が約3mで、南西方向に薄っすらと開口部らしきものがある。またPの南西には方形窪地Qがある。内側はコンクリートで固められており、屋根だったらしいコンクリートの残骸が転がっている。Qからは西方向に通路が掘られており、北側に連絡路が折れているが藪が酷くて確かめられなかった。
Pの南下には東西に長い平坦地Rがある。またRの南下には内側と 外側を石垣で補強した平坦地Sがある。またSとRの間の遊歩道の脇には標柱Tがある。

恐らくは、防空高角砲台の時の聴音機と探照灯とその関連施設が配置されていたのだと思われるが、基礎等は残っておらず、何がどこに配置されていたかは判らない。同時期に建設された鹿ノ川や大向の調査が出来れば、もう少し何かがわかるかもしれない。





探照灯?




左:平坦地U、北側、右:平坦地U、東側



左:平坦地V、右:平坦地W



左:平坦地Wにある窪地、右:平坦地Uの北下の石垣



左:平坦地X、右:同左


砲座Aの更に北東の尾根上の380mピークに、直径約5mの円形の平坦地Uがあるが、Uの北下に石垣で補強された所があることから何らかの遺構ではないかと思われる。Uの西下には平坦地V、北下には平坦地Wがある。Wには不等辺五角形をした窪地があるが、内側が綺麗に仕上げられているので水槽かもしれない。またWの北下には切り欠き平坦地Xがある。
平坦地Uの形状からして、探照灯が置かれていたのではないかと推測するのだが、Uの中心部を少し掘ってみてもコンクリート基礎らしきものが出てこなかったので、祠か何かの跡なのかもしれない。

またここから更に北東の、大岩のある分岐を南に進んだ所にも、岩を方形にくり貫いた遺構があるのだが、羊歯が酷くて全体の形状がどうなっているかは確認できなかった。こちらも社等の可能性もある。





烏帽子山山頂


左:烏帽子山山頂(南から)、右:同左(北から)



左:烏帽子山から391mピークを望む、右:鉢巻山(高畑砲台)、休山方面を望む


米軍の航空写真を見ると、烏帽子山山頂付近にも施設らしきものが写っていたので登ってみたが、これといった遺構は見つからなかった。
標柱Tが遊歩道をまたぐ方向に区域を指定しているので、こちらには何もないかと思われるものの、やたらと広い平坦地になっているので、念のために載せておく。





偽装砲台?



また、同じく米軍の航空写真を見ていると、烏帽子山防空砲台の南東側に砲座らしき4、5個の円形窪地が写っている。戦時日誌等には何の情報も無く、防空砲台の関連施設かどうかは不明である。偽装砲台ではないかという話もある。





日付 呉海軍警備隊戦時日誌及び引渡目録による記事
S12.9竣工 官房機密第3562号(S17.8)
昭和16年11月 防空砲台、第五砲台群(下士官3、兵11)
89式高角射撃盤2型1、8cm高角砲常装3号通常弾薬包300
准仕官以上2、下士官兵60、有線電話
8cm高角砲2門、ステレオ式2m測距儀1、シ式75cm探照灯1
90式2型聴音機1、石油発動機1
准士官以上2、下士官9、兵51
昭和16年12月 防空砲台
昭和17年1月 防空砲台
昭和17年2月 官房機密第1979号訓令に依り呉軍港防空砲台(大向、烏帽子、螺山、灰ヶ峰)変電所新営工事施工の件指令す(呉鎮)
官房機密第2216号訓令に依り大向、烏帽子、螺山及灰ヶ峰防空砲台電気施設増設の件指令す(呉鎮)
昭和17年4月 3年式40口径8cm高角砲2門
ステレオ式2m高角測距儀1、89式高角射撃盤改二1
斯式75cm探照灯1、90式空中聴音機1
弾薬庫1、直流発電機1
電動直流発電機(探照灯用)1 増設予定敷地完備
配員 下士4(臨14)、兵11(臨20)分隊長のみ
昭和17年6月 探照灯用部外電力用変圧所新設中
昭和17年7月 探照灯用部外電力用変圧所新設中
昭和17年8月 8cm高角砲2、89式射撃盤1、75cm探照灯1、ス式2m測距儀1
90式聴音機1、観測鏡2、7倍双眼鏡1、6倍双眼鏡2
昭和17年9月 防空砲台第5砲台群
昭和18年1月 防空砲台(第2砲台群)
昭和18年7月 官房機密第1922号訓令による8cm防空砲台装備兵器中探照灯・聴音機の換装基礎工事7/1以降兵力をもって実施中
昭和18年8月 官房艦機密第4198号(18.8.18)(呉鎮機密第25号ノ286)、直流発電機械撤去の件訓令接受、時期を得次第工事に着手の予定
艦本機密兵電第970号(18.8.27)、電気兵器供給の件通牒接受
昭和18年10月 官房艦機密第1922号(18.4.22)訓令に依り照聴所電気兵器換装工事完成(10.5)
電気兵器供給 完了
昭和19年6月 8cm高角砲2門
昭和19年7月 防空高角砲台 8cm高角砲2門
昭和19年8月 8cm高角砲2門 既設
昭和19年9月 8cm高角砲2門 既設
昭和19年10月 8cm高角砲2門 完備
昭和19年11月 8cm高角砲2門 畑高地へ移設
150cm探照灯1、空中聴音装置1、砲移設完了せば照聴所とす
昭和19年12月 新宮、烏帽子、高烏、螺山 計12門 完備
150cm探照灯1、空中聴測装置1 完備
昭和20年1月 新宮、烏帽子、高烏、螺山 計12門 完備
150cm探照灯1、空中聴測装置1 完備
昭和20年2月 新宮、烏帽子、高烏、螺山 計12門 完備
150cm探照灯1、空中聴測装置1 完備
昭和20年8月31日 引渡:
96式150cm探照灯及び同管制器、付属品補用品共、電動直流発電機 1基
仮称ヱ式空中聴測装置、付属品補用品共 1基
建築物 兵舎1、其ノ他付属施設5

用地:9567m2、建物:297m2





ここから以下のページへいけます。