繁殖について 

繁殖について スタンダード(犬種標準) 遺伝性疾患と検査

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■■あなたの繁殖の目的はなんでしょう。■■
1)お金儲けをしたいから。
2)愛犬の子犬を残したいから。
3)一度は出産を経験させたいから。
4)理想的なコーギーを作りたいから。

1)コーギーを迎える時、ペットショップで「出産させれば元が取れるよ」
  などと言われた方もいると思います。
  でも後述するスタンダードや遺伝性疾患などのことを知ったら、クオリティーや検査を無視して
  繁殖することはできないのではないでしょうか。
  繁殖は手間とお金のかかるものなのです。
  それともクオリティーに問題のある犬でも遺伝的に病気を持った犬でも
  構わず繁殖して、お金儲けをしますか。
  生まれた子犬が苦しい思いをしたり、飼い主が苦労したり悲しい思いをしても構わないのですか。  
エンジェルの願い−ペットショップ生まれの子犬の一生 ぜひ読んでくださいね。
2)犬は複数の子犬を産みます。
  他の子犬たちにも十分な愛情を注いでくれる暖かい家庭を厳選して繁殖者としての責任を果たしましょう。
  万一健康でない子犬が生まれたら、一生面倒を見る覚悟をしておきましょう。
  しかしながらスタンダードを外れたり遺伝性疾患を受け継ぐ子犬を増やさない努力こそが
  繁殖者としての本当の責任です。
3)愛犬は出産したいと思っている訳ではありません。それは飼い主の希望です。
  出産させるのが自然なことと思っている方もいらっしゃるようですが、
  純血種はもともと繁殖をコントロールして人為的に作出されたものなので自然とは言えないのです。
4)好みの理想的なコーギーを作るのはとても難しいものです。
  趣味としてお金と時間を掛けることが出来てもなかなか思うようにはいかないようです。
  それでもこのようなシリアス(ホビー)ブリーダーがいるから、犬種の保存と向上があるのですね。

コーギーという純血種のクオリティーの保存と向上のため、また遺伝性疾患を受け継いだコーギーを
増やさないため、繁殖に適したコーギーだけを繁殖しましょう。

■■もう一度よく考えてみましょう。それでもあなたは愛犬を繁殖したいですか?■■
どうしても繁殖したいのなら、次のような手順を踏みましょう。

あなたの愛犬はスタンダードにどれだけ近いでしょう。
スタンダードを詳細に解説している本で勉強することはもちろんですが、ドッグショーで客観的にクオリティーを知ることが必要です。ドッグショーにチャレンジしてみましょう。完璧にスタンダードな犬は殆どいませんが、ドッグショーでたくさんの犬を見るうちにあなたの愛犬の長所や欠点が良く見えてきます。首尾良くチャンピオンになれたとします。でもまだそれだけでは十分ではないのです。

コーギーによくある遺伝性疾患、すなわち股関節形成不全、眼の病気、フォンウィルブラント病に掛かっていないことを調べなくてはなりません。
健康診断と血液検査を受けて健康であることはもちろんですが、股関節などのレントゲンを撮り、OFA(またはJAHD)に送り、股関節がフェア、グッド、エクセレントなど正常の診断を貰った犬だけを繁殖しましょう。また、眼科検査で眼に異常がないことを確かめましょう。VetGenでフォンウィルブラント病に掛かっていないことを確かめましょう。遺伝性疾患と検査については次項で詳しく説明します。

遺伝性疾患を持った犬を繁殖すると、遺伝子は子犬に伝わります。
その子犬の飼い主がまた何も調べずに繁殖するとその子犬達にも遺伝子が伝わります。そうやってどんどん遺伝性疾患を持った犬が増えていきます。遺伝性疾患を持った子犬を迎えた家庭は経済的精神的に負担を強いられるので、健全な子犬を譲ることが繁殖者の責任です。

しつけをする時、問題行動に手を焼いた犬は繁殖するのをやめましょう。
あなたが手を焼いたように、子犬の飼い主も苦労をするのです。我慢強くしつけをする飼い主ばかりとは限りません。さっさと諦めて捨てたり保健所に送る飼い主も中にはいるのです。保健所に保護され、殺処分されるコーギーがいるという現実に目を向けてください。

さて、次は交配相手を探すことになります。
交配相手にもクオリティーを要求すると同時に、あなたの愛犬と同じように健康であり、遺伝性疾患の諸検査に合格していることが必要です。なぜなら、交配相手の持っている遺伝子も、子犬に遺伝するからです。
愛犬の欠点を補う相手を探すのが一般的ですが、どんな血統と交配するかも重要です。ラインブリードは、血統の重なる犬との交配なので、生まれてくる子犬の予想がつきますが、遺伝的な異常が現れることもあります。血統が重ならないアウトクロスブリードは、どんな子犬が生まれるか予想がつきません。交配相手の選択は素人が判断しにくい部分なので、信頼できるブリーダーに相談しましょう。
ミスカラー、フラッフィーなど、重大な欠点を持つ子犬が生まれないためには
ミスカラー:白い部分の少ない犬を選びましょう。両親ともに立派なフルカラーがある場合、ミスカラーが出やすくなります。
フラッフィー:フラッフィーの遺伝子のキャリア同士を繁殖するとフラッフィーが生まれる確率が高くなるので避けましょう。最近コーギーのフラッフィー遺伝子検査が一部で行われましたが、日本ではまだ一般的ではないようです。集団でフラッフィー遺伝子検査が可能かもしれません。

子犬の血統書が発行されるのは両親ともに生後9ヶ月1日以上ですが、股関節が正常であることが確認できるのは2才以降ですから、その後の繁殖が望ましいと言えます。

相手が決まり、交配が済み、無事妊娠することができました。
出産に際しては、獣医さんとも連携して万全の手はずを整えておきます。犬は安産の代名詞のように言われていますが、そうとは限りません。自力で出産する犬ももちろんいますが、陣痛微弱で、陣痛が始まったものの自力で出産できない場合もあるので、帝王切開も覚悟しておきましょう。破水して長時間おくと子犬が死んでしまう場合があります。子犬だけでなく、あなたの愛犬が出産に耐えられず、死亡するケースもあるということも頭に入れておきましょう。こんな悲劇を防ぐためには、獣医さんとの密な連絡が必要ですが、獣医さんが助けられないこともあるのです。また先天的異常のある子犬が生まれた場合、一生面倒を見る覚悟が必要です。

出産後、お乳が出ない時、足りないときは、哺乳をしなくてはなりません。
育児放棄をする母犬も珍しくはないので、哺乳の準備は必ずしておきましょう。季節によっては室温の管理も必要です。生後数日以内に断尾もしなくてはなりません。輪ゴムを使った断尾は自分でもできますが、外科的に断尾するには獣医さんに依頼します。それなりの費用を覚悟しておいてください。

生まれた子犬の社会化のためには、生後2〜3ヶ月間、母犬の元で育てる必要があります。
離乳が始まると子犬用フードを準備し、一日数回、子犬が食べられるようにふやかすなど手間をかけなければなりません。トイレもしつけましょう。子犬が巣立つまで、家に誰か世話をする人がいなくてはいけませんね。

巣立つ準備ができる前に、子犬の飼い主を探します。
子犬に十分な愛情と手間を掛けられる暖かい家庭を慎重に選びましょう。しつけもできず、飽きたら捨てるような飼い主も最近はみかけられるので、家庭環境、家族構成なども重要です。それでもこういう世の中ですから、事情が変わって飼うことができなくなる家庭もあるでしょう。飼えなくなった時は、引き取るつもりでいてください。細部に亘る契約書を交わすのも良いですね。

注意しましょう。

牡牝を一緒に飼うと、牝が妊娠する可能性があります。最初から繁殖するつもりであるなら、それぞれの血統と遺伝的背景を調べ、繁殖をしても大丈夫な牡と牝を選んでください。そう言う意味で、ペットショップでの衝動買いはとても危険です。

また、近隣のお友達やネットでの知り合いなどのコーギーと安易に交配しないようお願いします。どうしてもそうしたい場合は、血統を調べ、諸検査を受けること。そしてクオリティーももちろん大事です。一般に、生まれてくる子犬たちは、母犬の資質を濃く受け継ぎますので、母犬のクオリティーは重要です。

牡の家庭犬の場合は繁殖のチャンスは皆無と言えます。なぜなら牝の家庭犬の方に繁殖の決定権があり、牝の家庭犬の飼い主は、よりクオリティーの高い牡犬を求めてブリーダーの持つ牡犬と交配することが多いからです。一度交配経験をした牡犬は、その後牝犬の発情に激しく反応するようになり、手を焼くこともあるのでやめた方が無難でしょう。どうしても繁殖させたいと牝を迎える場合も、それぞれの血統と遺伝的背景を調べ、適した牝を選ぶことが必要です。

どのケースも繁殖前にクオリティーを見極め、諸検査を受けることは言うまでもありません。

アメリカのシリアスブリーダーは、スタンダードに基づいたクオリティーを重視し、遺伝性疾患を除外して犬種の向上を目指しています。生まれた子犬が繁殖に適さないと判断した場合は、不妊手術を行うことを明記した契約書を交わしたうえで、慎重に選んだ一般家庭にコンパニオンアニマルとして譲ります。

安易な繁殖は避け、繁殖は健全なコーギーの保存と向上のために行いましょう。

  

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